研究課題/領域番号 |
15K12972
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石井 徹哉 千葉大学, 大学院専門法務研究科, 教授 (20351869)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 製造物責任 / 段階的過失 / 過失の競合 / ロボット / 自動走行システム |
研究実績の概要 |
前年度に続き,製造物責任に関する刑事法上の問題転換する議論状況をサーベイし,従来の過失犯論との接合可能性を検討した。また,ロボット等に関心のある若手研究者を集めて,「ロボットと刑法」研究会を定期的に開催し,自動運転自動車の導入に係る刑法上の問題を扱ったドイツ刑法の文献,すなわちドイツ刑法における動向を情報共有するとともに,ドイツ刑法の解釈論及び立法論,さらには新たな刑法理論の構築の提案等に関する論文をひとつずつを詳細に検討し,わが国の解釈論にとってどのように参考になるのかを検討し,その成果を公表しているところである。こうした検討のなかで,わが国の刑法における解釈論と自動運転自動車の導入に伴う事案解決のあり方の方向付けが徐々にできはじめている。とくに自動走行による正当防衛状況,緊急避難状況の問題など刑法総論上の古典的な問題を再度見直す必要性があるものと考えに至っている。 同時に,自動運転自動車については,国際的な条約,国家間の協定等における進捗が多くあり,この転換するフォローアップを年度後半からとりはじめている。これは,刑法上の問題に直ちに直結するわけではないが,道路交通法等の特別刑法に関する法改正などの立法提案にとって重要な意味をもっているものを考えられ,来年度も継続して情報を収集する予定である。 コンピュータシステムまたはプログラムの瑕疵について,慣例的に法的責任を追及してこなかったことと,製造物責任との調和をどのようにするのかが今後の課題であり,過失の要件の整理をしつつ,刑事責任の主体と複数の関与者の過失競合の問題などについて,議論の切り分けがようやくできたところであり,次年度以降に詳細を検討することになろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若手研究者を集めた研究会を主催したことで,法的な問題について議論する環境が整備され,急速に様々な問題状況が整理され,最終年度に向けて解決すべき問題が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
コンピュータシステムまたはプログラムの瑕疵について,慣例的に法的責任を追及してこなかったことと,製造物責任との調和をどのようにするのかが今後の課題であり,過失の要件の整理をしつつ,刑事責任の主体と複数の関与者の過失競合の問題などについて,議論の切り分けがようやくできたところであり,次年度以降に詳細を検討することになろう。 また,過失責任だけでなく,自動運転自動車が導入されることによる生じうる刑法総論上の各種論点について,従来の議論との接続を図りつつも,自動運転自動車の導入に向けた新たな可能性を阻害しない解決策を模索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツへの研究調査を予定していたところ,たまたま海外共同研究者であるヒルゲンドルフ教授が別の所用で来日し,そこで基本的な意見交換及び研究の打合せをすることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究発表のための旅費及び研究会の研究活動の旅費等に使用する予定である。
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