2017年4月1日に、龍谷大学至心館1階において、本研究の総決算としてドイツの研修者を5名を招いてシンポジウムを開催し、主として、ヨーロッパにおけるヘイトスピーチ規制と日本への影響可能性をテーマにして、これに関して生じる諸問題について検討をした。法学以外の分野の専門家との学際研究の利点を生かしつつ、それぞれの分野での認識を相互共有することを意識しながら、従前の研究会並び研究活動で得られた知見並び疑問点を本シンポジウムでの明らかになった検討課題とその後の研究会において検討した結果として、以下の点が明らかになった。 1差別的な表現行為を現行法は、その将来の暴力のきっかけとなることに照らして十分に把握し切れていない。2現在生じているヘイトスピーチ街宣やデモに対して公安上やヘイトスピーチ解消法は十分に機能していない。3事前の予防・抑止と事後の処罰の必要性が明らかになった。 4被害実態調査と被害者救済対策の必要が明らかになった。 注意すべき点として、(1)現在、ヘイトスピーチの問題とヘイトクライムの問題が区別されずに混乱して議論されている面があるのではないか。(2)ヘイトクライムへの法的対応はヘイトスピーチのそれと異なる面があり、ヘイトクライムへの法的対応について、現行刑法違反の犯罪行為に対する捜査や処罰のあり方の問題、司法審査のあり方などを検討する必要がある。(3)ヘイトクライムとヘイトスピーチの問題を混同して論じることがヘイトスピーチの法的規制の是非の議論に与える危険性を問題提起する。
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