研究課題/領域番号 |
15K12976
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金子 宏直 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (00293077)
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研究分担者 |
川和 功子 同志社大学, 法学部, 教授 (70295731)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デジタルコンテンツ / AR / VR / 利用契約 / ライセンス契約 / マーケットプレイス |
研究実績の概要 |
本年度は、インターネットを利用したデジタルコンテンツに関する契約の実例について調査研究を行った。音楽コンテンツ、映画等の動画コンテンツの配信サービスは従来から多く存在し普及している。これらのデジタルコンテンツとは別に、近時、ARやVR技術の発展・普及により、コンピューターゲームや関連するデジタルコンテンツが増加し始めている。これらのコンテンツについての利用がどのように行われるのかを、実際の契約例、多くは、サービスの利用規約としてベンダーとユーザーとの間の契約として締結されるようになっている。この点では、音楽コンテンツや映画動画コンテンツの配信サービスと共通する点がある。 また、映像音楽等のエンターテイメントに関連するコンテンツ以外に、ニュースなどの情報コンテンツの重要性が高まっている。ニュース・情報コンテンツは順次更新されること、ユーザーの関心を常につなぎとめておくために有用なコンテンツである。これらのコンテンツに関しては、キュレーションサイト(まとめサイト)が有用なビジネスモデルとして注目された一方で、大手のキュレーションサイトにおいて一部不正確な情報や第三者の知的財産権を侵害するコンテンツが混入することにより、サイトの休止が行われる等の問題点も表面化した。そこで、キュレーションサイトに問題のある情報コンテンツが混入する原因と、従来型のメディアにおけるニュース情報コンテンツの管理や利用契約等についての現状を把握するために、新聞等のニュース情報の利用状況についての状況調査等を行った。 そして、日本におけるニュース情報コンテンツに関する事例の紹介と法的問題を検討する国際学会における報告を行い、知的財産利用契約の際の情報の正確性に関連するリスクについて検討成果を発表した。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インターネット上でのデジタルコンテンツの利用契約のうち、AR・VRで利用されるようになってきているコンテンツに関しては、音楽や映像とは別に、新たな形態のコンテンツが開発されるためコンテンツ自体の呼称や概念が固定的ではなく、また、利用サービスも外国のベンダーによる提供が主なため、実際の契約の内容を整理するのに予想以上に時間を要している。 また、新聞等のニュース情報コンテンツの利用契約に関しては、従来のメディア会社がサービスやコンテンツ毎に複数の事業者により構成される状況があり、統一的な利用形態を見つけ出すことが困難なこともあり、概括的に説明できるようなモデルを考え、ニュース情報コンテンツの知的財産利用についての利用契約について整理を行っている。その際に、コンテンツ毎の事業者の区別という縦割りの区別が困難であるため、代表的なコンテンツ(自社制作コンテンツ、利用契約による他社制作コンテンツ、コンテンツの新規携帯での利用)等の一般的な区別に基づいて議論の整理を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
情報コンテンツを中心に情報の正確性や新たな利用形態が出現することにより、それまでの知的財産利用の継続が困難になるなど、知的財産利用を阻害する要因をあらためて整理する。これらの要因と、利用が困難になることで事業者の事業が行き詰まる場合について、民事再生手続の開始要件「事業者の経済的窮境」との関係を整理する予定である。その際に知的財産の評価にコンテンツとリスク要因の関連性を整理することで、倒産手続きを利用した知的財産関係の処理の可能性について考察をつづける予定である。 情報コンテンツの正確性以外のリスク要因についても、コンテンツの種類により移動があるのかについても調査考察を行うことで、より現実に近い問題点の把握を行うように研究を続ける予定である。その際にコンテンツのユーザーの視点の関係性についても考慮に入れることで、ライセンス契約の三者間契約の特性に配慮した考察をつづけたいと考えている。これらの研究結果を国際学会等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
デジタルコンテンツの利用の新しい形態が増加し、それらのコンテンツの利用についての理解に予想以上に時間を必要とした。近時のEUにおけるデジタルコンテンツ契約に関する指令等のフォローアップを行ったうえで、利用契約の現在での理解をあらためて行った。 また、ニュース等の情報コンテンツの利用について、映像や音楽と並び重要な知的財産のコンテンツとなってきたため、これらの利用状況についても調査等を行う必要があった。これらの情報の整理に時間を要するため、次年度に計画を伸長し、本研究課題の目的である、知的財産利用関係が複雑になることで逆に利用が困難となる状況と、一般的な倒産状況との関係について検討を行うことができるようにする予定である。 これらの研究成果を国際学会等で報告することにより、日本法における問題の情報発信と、海外の状況に関する情報交換を行うことで、研究の充実と、将来の研究の発展につなげたいと考えて、次年度使用に繰り越しの措置を行った。
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