研究課題/領域番号 |
15K12977
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
肥塚 肇雄 香川大学, 法学部, 教授 (30295844)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビッグデータ / 保険法 / 保険業法 / 保険料率算出基準 / 逆選択 / 保険事故の偶然性 / 技術革新 / 個人情報 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,平成27年11月14日に,平成27年度第2回日本保険学会関西部会報告会(於:京都産業大学)にて,「ビッグデータと保険法・保険業法─技術革新による法令への影響─」というテーマで単独報告を行った。 報告の要旨は,次のとおりである。 ビッグデータは,IoT(モノのインターネット),AI(人工知能),ロボット,自動運転車,iPS細胞,ドローン及びフィンテック等の実用化に向けての基礎を与えているだけでなく,保険契約にも今後大きな影響を与え得る。その一つが,ビッグデータの利活用により偶然であるべき保険事故の発生について,高い精度でその発生の確率を算出し得るようになることである。高度なリスク細分化が現実のものとなる。給付反対給付均等の原則をより徹底化することが可能となり,高いリスクを持つ者にはより高い保険料の額を,そうではない者にはより低い保険料の額を求めていくと,「逆選択」を招き得る。生保では,将来,ウェアラブル端末による健康リスク測定が常時行われ得る。このような高度に細分化されたリスク測定が常時に行われると,経済制度としての保険の存立を揺るがしかねない。また,保険法上の事故の偶然性の他,保険法の告知義務,通知義務,重大事由解除及び危険減少の保険料額減額請求等のあり方は再検討する必要がある。施行規則・施行令も含んだ保険業法上はビッグデータの利活用を想定して保険料率算出基準を設けていると思われず,特に自動車保険では,自動運転車等について料率算定基準の見直しが求められる。その他,個人情報保護については,個人情報保護法で十分なのか,不当な差別的取り扱いにならないような基準はどのようなものかが問われる。保険業法の趣旨は,経済制度としての保険が成り立つようにビッグデータの利活用のあり方を規制するという意味でのいわば業界保護法的な色彩がより濃厚になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,採択1年目に,日本保険学会関西部会で報告する機会を得て,研究の概要及び方向性について,まとめることができたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,日本保険学会関西部会で報告した成果を基礎に,ビッグデータに関する情報を収集することに努めながら,さらに保険契約および業法規制の視点から,研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,申請時には想定できなかった本研究に係るギリスの教授との意見交換の機会に恵まれ,研究計画を修正し,研究に取り組んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,研究領域は日進月歩で新しい状況が生まれているので,論文執筆の際にできる限り新しい情報を取り入れて行きたいと考えている。このような研究方針から,必要に応じて,書籍(和書,洋書)を購入するとともに,LAW JOURNAL, LAW REVIEW等の文献をデータとして収集し,また海外の教授を意見交換するため,校務等との調整を試みて,海外出張に赴きたいと考えている。加えて,国内外を問わず,本研究に関連する学会または研究会があれば,参加する予定である。
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