研究課題/領域番号 |
15K12979
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
宮崎 秀一 弘前大学, 教育学部, 教授 (60166147)
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研究分担者 |
飯 考行 専修大学, 法学部, 准教授 (40367016)
平野 潔 弘前大学, 人文学部, 准教授 (70400124)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 世代間対話 / 法感覚・法意識 / コミュニケーション力 |
研究実績の概要 |
第1に、中学校・高校において出前模擬裁判教室を実施し、日常の学習集団相互の評議における意見表明の状況を把握した(①9月18日:弘前学院聖愛高校、②11月18日:黒石市立中郷中学校、③12月8日:県立黒石高校の3校)。この場の特徴としては、自由活発な雰囲気の中で積極的に意見を交換できる点が裁判員に期待される適性と合致していると言える。反面、馴れ合い的な関係から真剣さを欠いた発言が目立ち、他のメンバーの主導的意見に安易に賛同して自らは深く考察することを避けたり、付和雷同したりする者が一部に見受けられる点がディメリットとして看取された。 第2には、研究初年度にしてコミュニティ・コート(市民対象模擬裁判教室)を3月13日に開催することができた。比較的小規模の地方都市である黒石市を候補として、市内の学校(前記②、③)での出前授業を実施しつつ、市の社会教育施設における開催可能性を探った。会場として最適な条件の市民交流館において、②・③の2校の中学生・高校生と一般市民からなる模擬法廷を設定し、審理と評議を行った。審理は中・高生には弁護人、検察官役を演じてもらい、一般市民から選ばれた裁判員からは証人・被告人への鋭い質問も出された。評議では、いくつの点で従来の学校における生徒同士のそれとは異なる様相を呈した。1)中高生は学校での模擬評議と違って、より真剣に事案を検討し発言していた。2)また中高生が犯行結果を重視し比較的重い実刑を選択する厳罰主義的見解が多かったのに対し、評議に参加した一般市民(平均年齢は約65歳)からは事件の背景や被告人の更生可能性を考慮して刑期を短く執行猶予も付ける保護主義的立場をとる傾向が見られた。3)一般市民の知識と経験に裏打ちされた意見に中高生が気づきを得たり理解を深めることで、当初の立場を修正する様子があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度末ギリギリではあったが、黒石地区において中学生、高校生、一般市民を同時に対象として模擬裁判教室を実施することができた。ただし、実施結果について、アンケートや記録したビデオ画像等による検討、省察は次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は初年度モデル地区で実施した学社融合型模擬裁判の結果を踏まえて、第2、第3の地区を選定し実施したい。 できれば第2地区での実践を今年度前半で実施して学社融合型模擬裁判の有効性について何らかの仮説を導き、最終年度における法教育プログラム開発につながる知見を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコミュニティ・コートのモデル地区の選定が1箇所、しかも比較的近距離のエリア(黒石市)にとどまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の第2モデル地区は多少離れた地域に設定する予定であり、旅費等の支出増が見込まれる。
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