本研究では、2年間にわたり、国際医事法に関する諸外国における議論・発展状況について、主に文献収集を通じた情報収集と、日本の状況の確認・発信を行うことにより、かかる分野の日本への導入・展開を図ろうとするものであった。この目的のため、当該分野の文献収集を精力的に行ったことに加え、当該研究領域において精力的に研究成果を発信している外国の研究者と個別に連絡をとり、意見交換並びに面談を行ってきた。 上記の情報収集・意見交換の結果として、初年度に得た知見は、国際医事法も私法・公法の二本立てという思考構図に従い、最終年度の今年度は、前年度が医療ツーリズムを中心とした私法領域の問題を中心に扱っていたのに対して、国際法を中心とした公法領域の文献と議論を収集することに努め、当該分野における専門家の知己を得て、海外出張を実施した。 結果として、私法領域では、医療ツーリズムの進展を望む声は経済分野では大きいものの、法的には提供される医療の質確保・事故があった場合の損失回復について制度の違いによる困難といった課題が明らかになり、単に当事者の自主的な選択に任せるといったことだけを考慮することで済む問題ではなく、多国間の協調の下に新たな制度構築が急務であることが判明した。一方、国際公法領域では、国際医事法の位置づけが用語法も含めて(International health lawあるいはGlobal health law)、必ずしもまだ統一されている段階にはないこと、国際的な研究者間の連絡などもなお発展途上であることなど、日本でも今後この領域に参加・寄与できる余地はまだ残されているとの知見を得ることができた。 上記の内容の本研究の成果は、医事法に関して執筆した教科書に、医事法と国際化という新たな章を追加して公表するべく準備中である。
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