研究課題/領域番号 |
15K12982
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
甲斐 克則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80233641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人体 / 適正利用 / 適正規制 / 臓器移植 / 遺伝子検査 / 遺伝情報 / 医療安全 / 治療 |
研究実績の概要 |
1.公表論文・図書として、本研究テーマと直接関係するものは、甲斐克則:「臓器移植と医事法の関わり」甲斐克則編『医事法講座第6巻 臓器移植と医事法』 信山社・2015年(pp.3-27)である。この論文は、臓器移植法成立以前から、成立後、そして改正後にいたるまでの我が国の議論を総括して、課題を示したものである。本稿により、研究テーマの基礎がある程度固まったといえよう。関連研究として、フェルディナンド・ヴォレンシュレーガー(甲斐克則・天田悠訳)「予測的遺伝子診断における基本権の衝突――知る権利、知らないでいる権利および秘匿権――」(講演訳)比較法学49巻2号,2015年(pp.187-206) を公表した。遺伝子検査の普及に伴い、遺伝情報の保護と利用の問題が喫緊の課題となっており、ドイツの憲法学者の早大での講演原稿を翻訳して、日本の議論に資することにした。 なお、付随的に、甲斐克則:「診療関連死の警察届出」前田正一・氏家良人編『救急・集中治療における臨床倫理』(克誠堂出版)2016年 (pp.123-137)、甲斐克則:「持続可能な医療安全と医事法」楜澤能生編『持続可能社会への転換と法・法律学』成文堂・2016年(pp.282-307)を公表した。 2.学会発表・講演として、甲斐克則:「医事法と生命倫理の交錯――唄孝一の『ELMの森』を歩く――」 明治大学ELM開設記念シンポジウム基調講演(2015年6月27日)明治大学駿河台キャンパス・グローバルホールで、甲斐克則:「End of Life Decision in Japan 」 第21回世界医事法学会基調講演(21th World Congress on Medical Law (WAML)) , 2015年8月7日 Coimbra, Portagueで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本格的研究に備えて準備研究会組織を作り、9月に1度研究会を開催することになっていたが、予算が削減されたため、方式を多少変更して、定例で年に4回私が実施している「医療と司法の架橋研究会」を活用して、越後純子氏(虎ノ門病院:医師・弁護士)、山口斉昭氏(早稲田大学法学学術院)、手島豊氏(神戸大学大学院法学研究科)ほかと意見交換をした。 臓器移植問題については、人体の適正利用の重要な一部であるが、甲斐克則編『医事法講座第6巻 臓器移植と医事法』 信山社・2015年を公刊できたことは、大きな成果であった。その中で(pp.3-27)、甲斐克則:「臓器移植と医事法の関わり」を執筆し、臓器移植法成立以前から、成立後、そして改正後にいたるまでの我が国の議論を総括して、課題を示した。次年度にさらに研究を展開する必要がある。 また、学会発表・講演として、「医事法と生命倫理の交錯――唄孝一の『ELMの森』を歩く――」を明治大学ELM開設記念シンポジウム基調講演として(2015年6月27日)明治大学駿河台キャンパス・グローバルホールで行い、「End of Life Decision in Japan 」と題して 第21回世界医事法学会で基調講演(21th World Congress on Medical Law (WAML)) を 2015年8月7日 Coimbra, Portagueで行った。後者は、海外発信の大きな成果であった。 さらに、中国社会科学院のQiu教授をお招きして、ゲノム編集の講演会を開催したほか、イギリスのロンドン大学キングズ・カレッジのペニー・ルイス(Penney Lewis)教授と東京で会合を開き、特に終末期医療に関して意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺伝情報をめぐる問題もさらに組み込んで、人体組織の法的位置づけをより明確にしていきたい。そのために、まず、臓器移植の問題を研究書にまとめ、つぎに、ゲノムないし遺伝情報に関する最近の諸問題や終末期医療に関する諸問題を論文等にまとめるほか、その成果を海外に発信していきたい。具体的には、台湾での講演、世界医事法学会(アメリカ合衆国ロサンゼルス)での報告、中国での講演を予定している。 また、ドイツやイギリスの学者を招いて、シンポジウムや講演会を開催し、議論を深める計画である。 さらに、国内の学者と学会や研究会でルールづくりについて意見交換を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内での研究会の日程調整がつかず、支払うべき旅費および謝金が残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の計画において、研究会を開催し、意見交換を行う予定である。
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