研究課題/領域番号 |
15K12982
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
甲斐 克則 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80233641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人体構成体の法的地位 / 臓器移植 / 人体構成体の利用 / ゲノム編集 / ミトコンドリア置換 / 生命科学 / メディカル・デュープロセス / 出生前診断 |
研究実績の概要 |
2016年度の大きな成果は、研究の柱である人体構成体の法的地位とその利用について、臓器移植を中心にして、『臓器移植と刑法(医事刑法研究第6巻)』を刊行することができたことである。特に本書に収めた序論および第1章において、基礎理論的考察を行い、全体の研究の方向性を確認することができた意義は大きい。 また、世界的に最先端の問題であるゲノム編集およびミトコンドリア置換を素材にして、「『生命科学と法』の最前線」と題する論文を執筆し、早稲田大学法科大学院の紀要である「法務研究論叢」2号に掲載したが、これも本科研費による研究成果として大きな意義があった。人体構成体のうち、ヒトゲノムは、きわめて重要な地位を占めるが、遺伝子改変を可能にするゲノム編集技術をめぐる問題は、将来の人類のアイデンティティに関わるだけに、国内外で議論が沸騰しつつある最先端のものであり、これに対して一定の法的・倫理的ルールを作るための枠組を呈示できたことは、貴重な成果であった。同時に、イギリスを中心に展開されているミトコンドリア置換に関しても、イギリスの動向を中心にフォローすることができた意義は大きい。 さらに、かねてから主張してきた基礎理論「メディカル・デュープロセスの法理」を海外にも発信すべく、 Proposal of the Legal Doctrine of Medical Due Process. Gunnar Duttge und Makoto Tadaki (Hrsg.), Aktuelle Entwicklungslinien des japanischen Strafrechts im 21. Jahrhundert, SS. 131-136,Mohr Siebeckという形でドイツの出版社から刊行できたことも、大きな成果である。 なお、オランダの学者も招聘して、出生前診断の講演会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の概要に示したとおり、研究は、計画通り順調に進んでいる。特に、研究成果のまとめと公表は予想以上である。海外の研究者との学術交流も進んでおり、2016年度にはオランダのラートバウト・ナイメーヘン大学名誉教授のペーター・タック教授をお招きし、オランダの出生前診断について講演会を開催したが、講演訳を比較法学に掲載予定である。終末期医療に関しては、すでに「終末期の意思決定と自殺幇助」と題する論文を公表した(『浅田和茂先生酷祝賀論文集≪下巻)』(成文堂)ほか、中国の重慶にある西南政法大学法学院で講演も行った。さらに、「『生命科学と法』の最前線-ゲノム編集およびミトコンドリア置換を中心に―」と題する論文も公表したことは、本研究の進捗状況をの実に示すものである。 かねてから主張してきた基礎理論「メディカル・デュープロセスの法理」を海外にも発信すべく、 Proposal of the Legal Doctrine of Medical Due Process. Gunnar Duttge und Makoto Tadaki (Hrsg.), Aktuelle Entwicklungslinien des japanischen Strafrechts im 21. Jahrhundert, SS. 131-136,Mohr Siebeckという形でドイツの出版社から刊行できたことも、大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、4月にフランスのリヨン大学において医事刑法国際シンポジウムに参加して、日本の医療事故について英語で報告するほか、8月にイギリスに出向いて生殖医療の認可庁であるHFEAを訪問するほか、オックスフォード大学において英国の先端医療の法的ルールを調査予定である。 また、ドイツのハレ大学のヘニング・ローゼナウ教授が秋に私のところに留学してくるので、ドイツの先端医療の問題について共同研究を行う予定である。 さらに、個人情報保護法が改正されたので、医療情報および遺伝情報に関する法的問題をさらに探究するほか、ゲノム編集についても、さらに彫り上げて研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を中国の西南政法大学での講演で発表したが、渡航費および滞在費を先方がすべて負担してくれたため、予定額を使用せずに済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
イギリスでの生殖医療認可庁およびオックスフォード大学での調査に使用する。
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