研究課題/領域番号 |
15K12983
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高林 龍 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90277765)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 追及権 / 欧州連合 / 美術の著作者 |
研究実績の概要 |
本研究の二年目においても、平成29年2月に「日本における追及権制度導入への道のり―追及権法早稲田試案―」をテーマとして再度国際シンポジウムを開催した。初年度のシンポジウムが、欧州の導入の現状を検討することで、我が国における導入の可否を探るといった主旨であったが、本年度は、そのような研究経過を経て、日本に導入するとすれば、如何なる法制度を作るべきかといった観点から、検討したものである。 本年度シンポジウムでは、まず、著作権協会国際連合(CISAC)事務総長のGadi Oron氏、同アジアパシフィック代表Benjamin NG氏より、世界的な追及権導入の動きについて講演をいただいた。次に、本研究の協力者である早稲田大学招聘研究員小川明子氏から、今回のテーマである追及権法の早稲田試案を提示した。続けて、新潟大学名誉教授斎藤博氏からは、試案に対するコメントを頂戴した。 同シンポジウムにおける後半においては、美術界をとりまく関係者にご登壇いただいた。日本画家の福王寺一彦氏、画商の岡崎守一氏、弁護士の木村道哉氏、美術家の籏野康弘氏、コレクターの宮津大輔氏である。それぞれの立場から日本に追及権を導入することおよび早稲田試案に対するご意見を賜ると同時に、前半の講演者からのコメントもあわせて活発な議論が行われた。 本研究の最終目標は、如何なる形で導入することが望ましいか、あるいは、導入による如何なる影響が考え得るかといった観点を含む、日本における追及権導入の是非を検討するという点にある。本シンポジウムにおいては、導入に際しての一つのたたき台となる試案を提出し、議論をおこなうことができた。 また、平成27年12月に北京で開催されたCISACによるWorld Creator’s Forumには、小川明子招聘研究員が日本を代表して参加している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二年目の研究実施計画は、初年度に調査検討した我が国の著作権法制度の研究成果と、諸外国の導入経緯等を基に、我が国に追及権を導入することが、具体的にはどのような影響をもたらすかという点について検討を行うことを予定していた。2017年2月の国際シンポジウムでは、我が国での導入による影響を考慮にいれた、早稲田試案第一案を発表し、それに対する美術関係者の意見を聴く機会も得ている。それぞれのシンポジウムにおいては、初年度は70名、今回は約100名の参加者があり、追及権に対する関心の高まりを示しており、本研究が社会に与えた影響は非常に大きいといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究成果を基に、追及権制度の是非について、あるいは、我が国における導入についてどのようにすべきであるかといった点も含め、明確な結論を公表していくことが必要である。 具体的な法制度については、前年度に作成された早稲田試案第一案を基に、議論の上で改訂し、本年度中に最適な最終試案を構築していくことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である平成27(2015)年度内に、当初の予定よりも早くシンポジウム開催が可能となったため、予算の一部を前倒しした。前倒し額と実際の使用額の差額については、平成28(2016)年度内のシンポジウムで使用を予定していたが、著作権協会国際連合(CISAC)からの共同開催の申し入れがあり、通訳代、CISACからの参加者の旅費等については、負担してもらったため、年度内に予算を使い切っていない。 また、平成29年4月にWIPO(世界知的所有権機関)からの招聘で、追及権コンフェレンスに参加しているが、これも、先方による旅費滞在費等の負担があったために、科研費を使用することはなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成29(2017)年度には、前回のシンポジウムで一部公開した追及権試案についてさらに検討を重ね、海外の専門家を呼んで、その評価を行う形でのセミナーを開催する予定である。
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