本研究は平成27(2015)年に3年間の予定で開始したものの、開催したシンポジウムの共催者からの開催費用負担があったために予算を使い切っておらず平成29(2017)年に1年間の延長を行い平成31(2019)年3月をもって終了したものである。 平成30(2018)年度においては、12月14日に山口大学との共催で「美術家のための追及権」をテーマとして、これまでの総括ともいえるセミナーを開催した。本セミナーにおいては、早稲田大学招聘研究員(現山口大学教授)小川明子氏による「追及権の現状」、早稲田大学講師末宗達行氏による「追及権早稲田試案と著作権法への影響」、および、同大学博士後期課程のホベルト・カラペト氏による「海外の追及権」についてそれぞれ講演が行われた。これまで、追及権をテーマとしたセミナーやシンポジウムは、東京での開催に限定されていたが、初めて西日本における講演の機会を得て、50人を超える聴衆が集まった。 加えて、同12月19日には、文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)において、追及権がその議題として取り上げられた。その際、美術関係者とともに小川明子氏が招聘され、追及権の世界の状況と日本における導入についての意見を述べる機会を得た。日本において追及権は未だ導入されていないものの、世界知的所有権機関(WIPO)においては、その著作権関連常設委員会(SCCR)の議題にすべきか否かといった議論がおこなわれてきており、文化庁がこのようなテーマを取り上げることは、2012年9月に小川氏が招聘されて以来である。 これらの講演は、これまで行ってきた追及権研究の集大成といえるものである。
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