研究の最終年度にあたる本年度は、これまでの現地調査等の取りまとめ、研究成果の取りまとめ、研究成果発表等の活動を行った。現地調査等の取りまとめでは、マレーシア、フィリッピン、香港等で行った人権委員会ないし人権NGOの資料・インタビュー等の精査・裏付け作業を行った。研究成果の取りまとめでは、①ASEANレベルの人権レジーム構築の動きとその課題、および人権NGOの活動、②マレーシアとフィリッピンに着眼した事例研究、③また付随的にビジネスと人権分野の制度構築の動きをレビューした。これら①~③の結果として、グローバル・リージョナル・ナショナルのそれぞれの位相における人権NGOの協調・連携とその限界について考察を進めることができた。研究成果発表では、①人権委員会ないし人権NGOの地域的連携が進んでいるものの、ASEANレベルの人権レジームの制度設計に市民社会の動きが反映されていない点(この点においては伝統的なアジア的価値とグローバルな人権観の角逐がいまだ随所にみられる)、②マレーシアとフィリッピンのナショナル・レベルで見た場合、人権委員会や人権NGOの政策提言および人権救済活動が一定の成果をあげていること、③(①で見たように人権レジーム構築の動きは全体として低調ではあるものの)ビジネスと人権分野においては人権規範化、制度構築が一定の進度で進んでおり、むしろビジネスと人権分野から人権制度構築が今後進展していく可能性があること等を指摘、強調した。本研究の研究期間は今年度で終了であるが、引き続き調査研究を継続するとともに、研究成果の論文化を行う予定である。
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