本研究課題は、米国の国際保健外交政策における民間財団の役割及び影響である。研究期間途中で、米国政権がトランプ政権となり、国際保健政策の優先順位が低くなった。そもそもブッシュ政権時に策定された米国大統領エイズ救済緊急計画は、国際保健外交政策の柱となっていた。その状況下において、ゲイツ財団など巨大な資金力をもつ民間財団の役割は大きくなり、オバマ政権下においてもその状況は継続していた。そのような財団は、単独で、容易に国際保健外交政策の方向転換を行うことが出来ることから、責任を持った行動をすることが必要である。民間財団は、国際保健外交政策策定に関わることが出来るが、寄付に関する政策提言、巨大財団の責任者が直接的に政策策定者に働きかけるなどが挙げられる。また、政策提言を行う財団への情報提供やその他の技術的なトレーニングや能力開発なども含まれる。 海外研究協力者のSusan Hubbard氏の調査協力により、ニューヨーク及びワシントンDCに所在する主に国際保健関係の民間財団にインタビュー調査を実施した。その結果、政権交代時には、今後の政策転換を予期しつつも、民間財団は、政治への不安定さや不透明感や不安感が高まったことが指摘出来る。また、実際に、2018年8月に、トランプ政権下の米国国家安全保障会議のグローバル・ヘルス・セキュリティ・チームは解体され、ブッシュ政権及びオバマ政権時の大統領マラリア・イニシアティブの責任者が辞任した。 海外研究協力者との共著で、「国際保健外交政策ガバナンスに関する米国の財団の聞き取り調査結果」を資料として、グローバル・ローカル研究に掲載した。 今後の研究は、グローバル・ヘルス・セキュリティの視点から研究を進めたいと考える。
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