この研究プロジェクトは、マッチング市場において中央集権的制度と分権的制度の比較を理論的に分析し、その結果を被験者実験にて検証する。
29年度は、この研究論文に関連した確率的メカニズムに関する共同研究の成果を海外学術雑誌(Mathematical Social Sciences)に出版した。これは、集権的なマッチング市場において、中心的な役割を果たすProbabilistic Serial Mechasnim(PSメカニズム)に関わるものである。3人の場合には弱耐戦略性、序数効率性、無羨望性によって特徴付け可能という従来の結果が、一般に5人以上には拡張できないことを証明した。
また、大学入試マッチング制度に関して中央集権的制度と分権的制度を比較する草稿(College Admissions with Entrance Exams: Centralized versus Decentralized)の論文を海外学術論文に再投稿し、条件付き採択された。再投稿に際して次のような結果を追加・修正した。元々のモデルは有限人であったが、それが非加算無限集合になるlarge marketにおいては中央集権的制度での均衡と分権的制度での均衡の双方を求め、そしてそれらが一致することを理論的に証明した。また、実験結果において、効率性を測定する指標を新たに検討した。そして、元々導出していた有限人での両制度下の均衡が異なる、つまりマッチング市場での摩擦について新たな考察を加えた。
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