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2015 年度 実施状況報告書

「時差」が国際金融取引に与える影響の理論的・実証的分析

研究課題

研究課題/領域番号 15K13003
研究機関東京大学

研究代表者

福田 慎一  東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00221531)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード時差 / 国際金融取引 / 媒介通貨 / 流動性 / 米ドル
研究実績の概要

本研究では、世界経済に「時差」が存在することが、国際金融取引にいかなる影響を及ぼすかを考察した。「時差」という経済外的な要因の存在は、地域間で取引のタイミングに差異を生み出す。本研究では、この差異が、世界経済の金融取引のあり方に大きな影響を与えうることを検証した。近年、地域間の取引関係や立地選択など、地理的な要因に注目して経済問題を考察する「空間経済学」が大きな発展を見せている。しかし、その大半の研究は、貿易など実物の取引に注目したものであり、金融取引に焦点を当てたものは限られていた。そこで、本研究では、従来の「媒介通貨の理論」や「流動性の理論」に「時差」という新しい要素を導入し、このようなアジア市場が直面する金融問題とそれに起因する脆弱性がいかなる理由で生まれているのかを考察した。分析では、まず、世界経済における媒介通貨の決定メカニズムを、「時差」という観点から理論的に検証した。次に、「時差」に起因する媒介通貨の流動性の差異が世界的な金融危機が発生した際に地域間に異なるインパクトを与えうることを、近年の高頻度データを用いて実証的に検証した。国際金融の分野では、なぜ世界経済で米ドルが長い間「媒介通貨」として選択されてきたのかは十分に解明されていないパラドックスである。また、リーマンショック後に世界的な金融危機が発生した中で、相対的に金融機関が健全であったアジア市場で米ドルの流動性不足がなぜ発生したのかは十分に理解されていない謎である。本研究の大きな特色は、「時差」という新しい概念を経済モデルに取り込むことで、それに起因する地域間で経済取引のタイミングの差異によって米ドルが国際通貨となりうることを明らかにすると同時に、媒介通貨としての米ドルの流動性の差異が、リーマンショック後、アジア市場に欧米の市場とは異なる流動性危機を生み出したことを示したことにある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「時差」が存在することが国際金融取引にいかなる影響を及ぼすかに関する実証的分析は、すでに論文が複数、国際学術誌に刊行されるなど、当初の予定以上の大きな成果が上がっている。一方、「時差」が存在することが国際金融取引にいかなる影響を及ぼすかに関する理論的分析は、まだ論文が国際学術誌に刊行される段階には至っていないが、基本的なモデルはほぼ完成に近づいているなど、論文の完成に向けて当初の予定通りの成果が上がっている。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、最終年度となるため、初年度に取り組んだ「理論モデル」および「実証分析」の完成に向けて研究を進める。また、分析の結果得られた研究成果を、セミナーや内外の経済学会で報告し、それらで得られたコメントをもとに更なる改良を図ると同時に、完成した論文は逐次、国際学術誌に投稿する。加えて、本研究では、アジア地域における国際金融システムの制度設計(アーキテクチャー)に対して、大きな意義をもつ成果が期待できる。このため、ある程度、研究結果がまとまった段階で、実務家の研究協力者からアドバイスをいただきながら、社会的にインパクトのある政策的インプリケーションを導出し、具体的な政策提言を行うことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

共同研究の打ち合わせのための海外出張を予定していたが、先方との日程調整が難航し、海外出張が数か月延期になったため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

共同研究者と打ち合わせのための日程調整がうまくいったあめ、数ケ月遅れではあるが、延期になっていた海外出張を次年度5月末に行い、支出する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Abenomics: Why was it so successful in changing market expectations?2016

    • 著者名/発表者名
      Shin-ichi Fukuda
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese and International Economies

      巻: 37 ページ: 1-20

    • DOI

      10.1016/j.jjie.2015.05.006

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Unconventional Monetary Policy and its External Effects: Evidence from Japan’s Exports2016

    • 著者名/発表者名
      Shin-ichi Fukuda and Tsutomu Doita
    • 雑誌名

      The Developing Economies

      巻: 54 ページ: 59-79

    • DOI

      10.1111/deve.12094

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] On the Predictability of Daytime and Nighttime Yen/Dollar Exchange Rates2016

    • 著者名/発表者名
      Shin-ichi Fukuda
    • 雑誌名

      Applied Economics Letters

      巻: 23 ページ: 618-622

    • DOI

      10.1080/13504851.2015.1093077

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Currency Exchange in an Open-Economy Random Search Model2016

    • 著者名/発表者名
      Mariko Tanaka
    • 雑誌名

      The B.E. Journal of Theoretical Economics

      巻: 16 ページ: 1-31

    • DOI

      10.1515/bejte-2014-0106

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 日銀の異次元の金融政策が為替レートに与えた影響に関する検証2015

    • 著者名/発表者名
      福田慎一
    • 雑誌名

      証券アナリストジャーナル

      巻: 53 ページ: 6-19

    • 謝辞記載あり
  • [図書] 「失われた20年」を超えて2015

    • 著者名/発表者名
      福田慎一
    • 総ページ数
      274
    • 出版者
      NTT出版

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公開日: 2017-01-06  

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