研究実績の概要 |
平成29年度においても、研究計画における「パラメータθが多次元の場合」について、集中的に研究を行った。スコアリングオークションに参加する入札者の費用関数が多次元の私的情報を含む場合の、均衡戦略(パラメータに対して入札者がどのような入札行動を対応させるのか)の存在を保証する条件について、大きな進捗があった。 多次元タイプのスコアリングオークションにおいて、単調な入札関数による均衡の存在証明のアプローチを、これまでの微分方程式を用いたものから、不動点定理を用いるReny(2011, Econometrica)にもとづく議論に変更した。これにより対数優モジュラー性(あるいはSingle-crossing property)の成立にむけて種々の制約的な前提条件を置いていた従前の状況にくらべて大幅に改善し、解釈がたやすい前提条件のもとで、スコアリングオークションの均衡が存在することが確認できた。 前提条件をより具体的に述べると、私的情報のパラメータの中に、固定費用にのみ連関するものが存在するというものであり、他のパラメータがどのように可変費用部分に連関するかについて特に条件を問わない。このような比較的ゆるい条件のもとで、入札者の効用関数が各パラメータと落札スコアについて対数優モジュラー性を満たすかどうかが問題となるが、これは多次元のパラメータ集合における部分順序関係を適切に再定義することによって解決可能であることを導いた。
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