本研究は,「ブリッジ・フィルター:新しいフィルター・クラスの提案」という研究課題のもと,Hodrick and Prescott(1997)により計量経済学分野で広く使われるようになったホドリック・プレスコット・フィルター(以下,HPフィルター)やKim et al. (2009)により提案され,近年広く使われるようになりつつあるl1トレンド・フィルターなどのトレンド推定手法をその特殊ケースとして含む新たなフィルター・クラスであるブリッジ・フィルターを提案し,その応用上の課題克服を目指すとともに,そうしたフィルターに関する新たな知見の獲得を目指した。この研究は,Fu (1998)により提案されたブリッジ回帰に密接に関連している。3年間の研究期間の最終年度にあたる今年度は,研究成果をワーキング・ペーパーにまとめヨーク大学(英国),滋賀大学,そしてシンガポール・マネジメント大学で研究報告を行い,得られたコメントを考慮しながら研究の完成を目指した。この間併せてHPフィルターやl1トレンド・フィルターに関する関連研究を完成させ海外の査読付き専門誌に研究成果を出版するなどした。これらの成果は,ブリッジ・フィルターの性質に関する新たな知見の獲得につながった。例えば,l1トレンド・フィルターの調整パラメーター選択に関して行った研究は,ブリッジ・フィルターの実用化の上でも課題であったその調整パラメーター選択法の提案につながった。この研究の完成にはGCV計算上必要である実効自由度の計算に目途を付ける必要があるなど解決できていない課題もあるものの,今年度の研究により大きく研究は進展した。
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