研究課題/領域番号 |
15K13013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 弘 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00361577)
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研究分担者 |
西川 浩平 摂南大学, 経済学部, 講師 (60463204)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イノベーション / 政策評価 |
研究実績の概要 |
初年度では、イノベーション活動に対する政策関与を定量的に評価するための手法の開発と、次年度の推定作業に向けての資料収集・データ整理を行った。イノベーションが民間企業の担うべき活動であれば、市場が正常に機能している限り、政策の関与は逆に民間活動を圧迫(クラウドアウト)させる懸念がある。今年度は、研究開発活動およびイノベーションの成果が体化された財・サービスが市場に上市されたときのパフォーマンスを企業の戦略的な行動も考慮した構造推定モデルを開発した。それと共に、その推定モデルに用いるデータの収集も併せて行った。推定モデルにおいては、企業の研究開発活動、その結果における成果の確率的な生成過程、成果が体化された財・サービスに対する市場における需要家の行動がモデル化されている。また推定モデルにおいては、企業競争から生じる外部性と研究開発活動に起因する外部性が記述されており、政策効果を評価する場合の評価軸を埋め込まれている。推定モデルにおいては、中間的な成果に対して意見聴取をするために、研究者との意見交換をセミナーなどを通じて行っている。データ収集に関しては、個票データを含むデータ収集に着手しており、それらのデータを接合して構造推定モデルを用いた分析を行うことを想定している。現在開発を進めている解析ツールは、様々な事象への応用が見込めることから、そうした観点からアカデミックな観点、および社会的なリーチアウト活動の一環として、いくつかの論考を記すと共に、講演も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、(1)イノベーション活動に対する政策関与を定量的に評価するための手法の開発と、(2)次年度の推定作業に向けての資料収集・データ整理を行うことを当初の研究計画目標としてきた。(1)については、民間企業がイノベーション活動を行い、それを財・サービス市場で販売する一連の過程をモデル化し、併せてイノベーション活動の流れの中で生じる外部性を定式化することに注力を注いだ。(2)については、企業レベルの活動を描写した上記(1)のモデルに合致したデータを収集するための作業に入り、現在、イノベーション活動やそれに関わる販売に関する企業の個票レベルのデータを整理分析し始めている。こうした点で、当初の研究計画目標をほぼ達成しながら、本研究は順調に進展していることと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において開発を進めてきた推定モデルに収集したデータを適用して、推定作業に入る。事前のデータ解析の感触から、外部性の存在とそれに基づくクラウドアウトが生じているいくつかの兆候をデータから認めており、それを経済モデルによって具体的に把握することに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集・解析にかかる費用が当初の見積もりと比較して安く済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ解析の精度を上げるために、ソフトウェアなどを購入することを検討している。
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