研究課題
電力小売り市場分析のために官公庁が実施している小売り入札データについて継続して収集を行った。研究成果としては、原子力発電所が停止した影響とその代替のために火力発電所を導入した効果についての空間均衡分析と、太陽光発電設備を備えた家庭についてそのデマンドレスポンスをフィールド実験によって明らかにした2つの論文を、和文書籍の一部として公刊した。前者については、電力卸市場を9地域の空間的部分均衡モデルとして表現し、各地域に発電所と需要家が立地し、地域間が送電容量制約のある連係線で繋がっているとした。その状況で東日本大震災後のような、完全に原子力発電所が停止した場合の市場への影響を、需給量や電力価格、および、地域間の送電パタンといった観点から計量的に明らかにした。さらに、その停止した原子力発電所と同じだけの設備容量を持つガスタービン複合火力発電所を導入したとして、その影響についてもシミュレーション分析を行った。なお、原子力発電所の停止パタンについては、すべての原子力発電所が停止した場合、沸騰水型のみ停止した場合、機齢30年超のみ停止した場合の3種類を考慮し、より現実的な、しかし、しばしば地域間で不均衡が発生しそうな状況も考慮した。また、ミクロ・レベルの家庭のデータを用いて、太陽光発電(Photovoltanic, PV)システムをもつ家庭(PVプロシューマー)の行動について分析した。特に、買電価格と売電価格を変化させることにより、PVプロシューマーがどのような需要反応(デマンドレスポンス)を示すかを調べた。フィールド実験のデータを解析した結果、PVプロシューマーのデマンドレスポンスは、太陽光発電システムをもたない一般世帯に対する効果の4分の1程度にとどまることがわかった。
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Journal of Choice Modelling
巻: 19 ページ: 54-72
http://dx.doi.org/10.1016/j.jocm.2016.07.002