近年話題になっている暗号通貨(仮想通貨)について、どのようにその価格が形成されるのかを、経済学の観点から、その理論を構築した。理論の構築には、暗号通貨の市場を考える必要性より、総供給と総需要を導出して市場均衡を考えるという流れになる。 総需要を導出するにあたり、(1) 決済手段 (2) 生産要素 (3) 投機資産という3つの需要から考えた。暗号通貨を支払い手段として考えた場合の理論構築には、マネーサーチモデルのステージゲームを想定してたバーゲニングモデルを用いた。また、暗号通貨の基礎となっているブロックチェーンを、近年話題になっているFinTech関連の企業等が提供するサービスの生産要素とする場合の理論構築には、新古典派の生産技術を考えたモデルを用いた。これに投資家の行動を合わせて、暗号通貨の総需要を導出した。そして、総供給は暗号通貨保有者が市場で売りに出すという投資家としての側面を考えたモデリングを行った。 本研究課題で設定したモデルを用いて市場原理に基づいて考えると、暗号通貨の価値は需要が発生することにより創造されるが、その需要は世間でよく言われるような単なる投機目的の需要のみではない。決済機能を含め、ブロックチェーンを利用するサービスが展開されることで需要が発生して価値が創造され、その需要の膨らみが予測されることで投機が活発となる。したがって、暗号通貨の高騰は単なるバブルで片付けることはできないことがわかる。 経済学は価格形成のメカニズムを明らかにすることから始まる。この価格形成理論を構築したことによって、暗号通貨に関する今後の経済学分析が可能となり、暗号通貨に関して技術系や法律・会計の議論に追いついていなかった経済学がこの分野に参入する基礎となる。
|