研究課題/領域番号 |
15K13023
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
大島 誠 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (60709161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PFI方式 / ESCO事業 / 省エネルギー / 財政効果 / 環境効果 / 環境配慮型VFM |
研究実績の概要 |
今年度は主に環境配慮型PFI(Private Finance Initiative)方式に対して、市場性のみではなく温暖化対策も視座に入れた環境配慮型PFI方式を実施する場合の制度設計を検討した。その具体的な方法としてESCO(Enegy Service Company)事業を基礎とし事業を実施するか否かのもっとも重要な判断指標であるVFMに省エネルギー削減額や環境保全効果を加味した環境配慮型VFM(Value For Money)を提案した。さらに、事業者の入札、支払いスキームそして環境配慮型PFI方式を導入する際の課題を議論した。では熊谷PFI事業を対象に事業の採算性や財政・環境効果の検証そしてバンドリング効果の意義と課題を分析した。 その結論は次の通りである。環境配慮型PFI事業を実施するか否かの判断基準である環境配慮型VFMとして事業費・リスク・質の向上といった市場型VFMに関する要因だけではなく、省エネルギー効果による光熱水費の削減額とそれに伴う温室効果ガスも加味する必要がある。特に、地方公共団体は自らの温暖化防止活動や環境対策を策定しているならば、地方公共団体は温暖化対策を目的に省エネルギー効果による温室効果ガス削減分を貨幣価値に換算し、その金額を削減額に応じてESCO事業者に支払う合理性があると考えられる。事業性に関しては、従来型公共施設整備方式や市場型PFIと比較してESCO事業者の責任が大きい。具体的にはパフォーマンス契約を採るため、仮に事前に取り決めた光熱水費を削減できなかったならばESCO事業者がその分を補填しなければならない。また、仮に環境配慮型VFMを期待できる事業でもESCO事業者は独立採算型が難しい場合、温室効果ガスの貨幣的価値の金額以内を地方公共団体が公的資金を支払うことは社会厚生的に意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回の科研費の研究計画書作成時には知り得なかった「ESCO事業」という省エネルギー事業の方法を知った。この事業は発注者である地方公共団体が実質的に追加的な財政負担を負うことなく、さらに専門知識や人員を割くことなく民間事業者の技術や資金を活用し、そして一定の省エネルギー効果を保証する省エネルギー手法である。 この方式の事業スキームは本研究で対象とするPFI方式とほぼ同一である。また、本研究と同じ目的である環境効果や財政効果を意図している。そして、実際に埼玉県で積極的にPFI方式を基礎にしたESCO事業である。 このような特徴や実際の事例を学び、本研究は当初の予定を大幅に上回る研究を成し遂げた。具体的には、今まで研究してきたPFI方式はもちろん、それに基づいた「PFI型ESCO事業」という事業を確立した上で、実際に導入されている埼玉県の各事業を事例に制度ならびに事例分析を進めることができた。その過程で埼玉県へのヒアリングや多数の研究会やイベントに参加し最新の環境に関する知見を知り得たことも大きな要因である。 以上のような背景から、本研究は当初の計画以上に大幅に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の研究手法や分析対象を継続して進める。また、本研究テーマに従い、埼玉県のPFI型ESCO事業の研究が一段落したら、全国の浄化槽や環境配慮型PFI方式の類型化にも着手したいと考えている
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)「732,740円」は、研究期間である3年間分の最終年度の残額である。概ね、当初の予定通りの金額である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画書に従い、執行する予定である。
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備考 |
私が所属する横浜市立大学の地域貢献事業やCOC(Center of Community)事業において研究成果の社会への還元や発表という意味でWEBページにアップしました。
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