本研究の目的は、政府が公共サービスを供給する場合に民営化手法の1つである「PFI(Private Finance Initiative)方式」を対象に一般的なコスト削減、質の向上そしてリスク配分といった「市場性」という財政効果のみだけではなく、循環型社会の形成や地球温暖化防止を促すための「環境配慮型PFI方式」に関する事例研究ならびに制度設計の構築を目指すものであった。この目的を遂行するために、主に埼玉県で財政効果のみではなく、環境効果へも配慮した事業を選定し分析を行った。 主な結論は、コスト削減という財政効果にとどまらず一定の環境効果を期待できるならば、補助金の投入も合理性がある。さらに1つの施設では事業の採算性が難しくとも複数の施設を束ねてバンドリングすれば、施設内の損失補填というクリームスキミングを介して事業化可能となる場合もある。埼玉県の事例研究を踏まえ事業の選定基準を環境配慮型VFM(Value for Money)という財政効果と環境効果を測定する評価軸やバンドリング手法を考案あらびに活用した。これらは温暖化防止活動を考慮している全国の地方公共団体へ一定の示唆を与えると思われる。 また、PFI事業にESCO事業(Energy Serive Company)という事業者主体の省エネルギーとしてPFI型ESCO事業は、契約更新することによって財政効果および環境効果を高めるという意義は考えられる。事業者の応募がない場合や事業者のESCO事業遂行能力、ESCOサービス料、事務手続き等を契約更新の際には考慮しなければならない。なお、他の水道・下水道・廃棄物処理施設・空港等の対象施設では、その事業特性に応じた契約更新の制度設計が必要であることがわかった。
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