研究課題/領域番号 |
15K13032
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
安本 雅典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40293526)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コントロール / 実装知識 / 知財(戦略) / 専有性 / 標準 / 必須特許(SEP) / ネットワーク / スピルオーバー |
研究実績の概要 |
本課題では、平成28年度は、主として以下の点を検討した。(1)移動体通信分野の標準化を中心に、各企業における知識のあり方(技術間のネットワーク)の発達を検討した結果、主要な企業が、重要な領域間にわたって必須特許を申請し、当該システム全体の知識を蓄積していることが明らかになった。合わせて、集中的な文献検討と主要企業へのインタビューから、主要企業は、そうした知識によって、それ以外の企業に先行して実装を進め、産業や技術をコントロールしながら、事業上優位に立っている可能性があることが予想された。 また、(2)データベースをアップデートし、標準化を進め必須特許を保持している企業からの、後発企業による特許引用を検討した。その結果、被引用が多く、引用のネットワークの中心となっている複数の企業が、(1)の主要企業と一致することを確認した。こうした結果から、システム知識を保持する主要企業を中心として、事業に必要な実装の知識の後発企業へのスピルオーバーが進んでいることが予想された。なお、これらの代表的な企業には時系列的な変化があり、急速に必須特許申請を増やしながら成長してきた一企業を中心に、急速に知識や技術の普及が進んできたことも明らかになった。標準化への貢献以上に、必須特許が技術や知識の普及を促している可能性がある。一方で、そうした必須特許は、一見スピルオーバーを促しているように見えながら、主要企業による産業や技術のコントロールを可能にしている面もある。 これらと合わせて、(3)標準技術への貢献のデータを収集しやすい、オープンOSへのソースコードの貢献についてもデータ分析を行った。その結果、標準技術への貢献が多いほど、知識を蓄積して、効率よく製品開発(実装)を行うことが可能になることや、一方でそうした効果は、標準技術が成熟し、各企業による学習が進むとともに薄れることが、暫定的に確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、調査、データの収集・蓄積(データベースのアップデートを含む)、国内外での学会発表や実務家との意見交換を進めることにより、調査・分析課題の検討、データ分析、途中成果の執筆・報告を行うことができた。一方、海外ジャーナル向けを含め、個々のテーマについての原稿作成に時間を要したことから、全体的な研究の枠組やデータ分析の洗練に多少遅れが生じている。これらの点から、②とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに的を絞って、先行研究やデータの整理、調査によるデータの確認・追加収集と分析を進め、それらの成果にもとづき、国際標準化による技術の普及下での、企業における知識の普及-専有の効果的なマネジメントの戦略を提示することを試みる。より具体的には、技術や知識の普及とコントロールについて、的を絞った追加データ収集・分析と文献レビューを行い、理論的な枠組みを洗練させる。こうした枠組みをふまえて、調査や分析の精緻化を図り、技術や知識のスピルオーバーと合わせて、企業独自のシステム知識とそれによる産業や技術のコントロールへの理解を深める。 また、成果については、学会・研究会やワーキングペーパーによる発表を進めるとともに、書籍出版や国内外の論文への投稿をより積極的に行っていく。また、国内外で投稿中の関連論文が複数存在するため、刊行を目指す。
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備考 |
新年度開始に当たり、改訂作業中。当該科研費に特化したものではないが、関連業績・活動を紹介している。
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