震災復興支援に活用できるCRMのモデル開発をするため,企業意見聴取や実証実験を実施して課題を検証しながら研究を進めた。最終年は,CRMの実証実験と被災地情報の収集を実施した。 1)実証実験結果 震災復興というコーズをもつCRMが,企業や消費者の共感を得て受容されるか,2大学生協とTabioで実証実験を実施した。大学生協では,同じコーズ(熊本地震 西原村復興支援)で2016年と2017年の10月に,同じ商品分野(菓子と飲料)で販売実験を実施した。販売実績は,2016年の菓子は前年比140%,2017年の飲料は前年比110%~115%となった。生協来店者とTabioの購入者へのアンケート調査から,支援目的での購入率は10%~15%と推定された。販売実績も同水準であることから,CRMは10%~15%の支援購入が見込める。社会支援目的の購入は,男女差が見られる。顕著な例は、生協での2年目販売実験で、男性の支援購入は前年調査時の8.5%から0%に減衰,女性は10.7%から10.3%とほぼ変わらず,時間経過で男性の支援意識が低下した。 2)CRM継続実施の課題 ①同じコーズでは,インパクトが低下するため,繰返し支援に使うためには関心を喚起する方策が必要である ②CRMは,社会支援購入の男女差を考慮し女性を意識した商品分野を重視する ③周知率が低いため,累積効果も考えて共通マークを使用し,商品が分散して陳列されても,客が見つけやすい工夫が要点となる ④売場が中心となるため,流通事業者を主に企画を進め,製造者の協力を得る取組が成功しやすい流れとなる ⑤製造企業の単独CRMは,単発的で消費者の協力も得にくく,金額も限られ多様な使途に適用しにくい。 3)結論 CRMは,10%~15%の社会支援購入が見込める点で復興支援に適する。コーズの設定や周知方法など課題はあるが、CRMモデルは開発が可能である。
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