平成28年度はまず、前年度調査対象とした関連企業、公的機関を事例として、キャリア開発(CD)支援と成果に重点を置いた分析を行った。具体的には、CD視点を反映した就労支援が成果をもたらす要因を検討した。とくに被雇用者個人レベルの成果についての情報収集に努めた。ただし、限られた事例に関する調査であることを勘案して、成果をもたらす要因についての仮説を発見することを目標とした。加えて、発達障害者自身によるキャリア・プラニング(CP)への支援のあり方を検討した。CPは直接的なCD対応策の中でもより自律的かつ包括性を持つため、詳細分析の対象として適切と考えられたためである。具体策としては、個別カウンセリングやメンタリングが想定され、長期的には発達障害者がメンターを担当することも現実的な目標になり得るとの結論に至った。前年度の実績を含む文献調査、事例調査結果を検討したうえで、先行要因からCD支援、その成果に至る一連の関係を「発達障害者を対象としたCD重視型長期的就労支援モデル」に取りまとめた。モデルに基づいて作成した提言では、分析結果がより一般的な仮説検証が求められる段階にあることに配慮して、有効と考えられる支援方法の試行を広く呼びかける内容としている。以上の研究成果を踏まえて、年度末までに研究全体の最終取りまとめを実施した。この間、前年度と同様、研究の進捗を確認するため研究会を4回開催して、各時点での研究成果を報告した。研究会での議論も反映させたうえで、文献レビュー論文の学術誌への投稿および「先行要因→CD支援」、「CD支援→成果」に関する学会報告の準備を進めた。
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