欧米でも日本でも頻繁に見られるようになったプロスポーツチームの新規設立、買収・売却、合併・統合、株式公開等の局面において、それに関与する利害関係者の意思決定に非常に重要な役割を果たすのが、チームの価値を正確に見積もるための価値評価手法である。ところが、プロスポーツチームの価値評価の根拠となる将来のキャッシュフローは、選手の移籍・レンタル・フリーエージェント・引退、チームの毎年の試合数の増減(上位大会への進出の有無)、リーグの昇格や陥落の可能性等、スポーツチーム特有の不確実性や不連続性に依存するため、合理的な価値評価手法の開発が阻害されてきた。本研究では、こうした阻害要因を克服するために、不確実性や不連続性が著しく大きい事業環境下での価値評価を得意とするリアルオプション・アプローチを用いることによって、現実適用性の高い「プロスポーツチームの価値評価手法」を開発してきた。 本研究の成果は、プロスポーツチームの設立、M&A、上場等に関与する利害関係者に合理的な視点からの意思決定を可能にするものである。また、本研究で開発された価値評価手法は、選手やスタッフを複合的なリアルオプションとして認識し、その価値を算定することを出発点とするため、ここでの研究成果はそのまま個々の選手やスタッフの価値評価手法の開発にも直結する。さらに、この選手の価値評価手法を応用すると、スポーツ以外の分野におけるプロフェッショナル的な人材の価値評価手法の開発も可能となることから、これらの人々と雇用契約や顧問契約を締結する際の意思決定にも有効性を発揮する。
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