研究課題/領域番号 |
15K13042
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹内 規彦 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (40387569)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経営学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、予測困難かつ変動の激しい今日の企業社会における組織人の「新たなキャリア意識」の特定化と、その実情を踏まえた職場及び組織におけるキャリア形成支援を組み込んだ競争力の高い人材マネジメント施策の探求にある。具体的には、(1)萌芽する「新たなキャリア意識」の特徴の析出ならびに明確化、(2)「新たなキャリア意識」に適合した職場内(上司/同僚)・職場外(社内の部門を超えたメンター/社外メンター)環境の特徴の析出・明確化、及び(3)自律的なキャリア形成の「機会」創出と「能力」向上を組み込んだ人材マネジメント施策の創造・提起の3点を行う。平成27年度は、「フェーズ1:探索段階」として位置づけて、具体的には、以下の(1)~(4)の研究活動を行った。 (1) 文献・資料の収集とレビュー:日本企業における従業員の「新たなキャリア」概念の定義と対応する職場・組織の人材マネジメント施策に関する関連文献調査と資料収集を行った。 (2)インタビュー調査の実施: (1)の一環として、企業の非管理職及び管理職(課長級のマネージャー及び人事部長)に対して、半構造化面接形式のインタビューを行い、多様化するキャリア意識及びキャリア・マネジメント施策に関する質的データを収集した。 (3)仮説と概念的フレームワークを設定:(1)(2)を踏まえた暫定的な分析フレームワークを設定した。このフレームワークには、新規参入者の社会化プロセスや新たな役割を付与された組織人材の役割移行プロセスも含まれる。 (4) 成果発表:特に、新規参入者の適応過程に関しては、初歩的な成果を国内及び海外の主要学会にて報告した。具体的には、産業・組織心理学会、英国経営学会(British Academy of Management)などである。これらの成果は、現在海外の主要学術誌にて査読審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した4点の研究計画について、特に遅滞することなく実施することができたためである。遅れが発生する大きな原因の1つに、データ収集の障壁や対象者へのアクセシビリティの困難度が挙げられる。しかし、この点については、科研費の研究計画書作成段階から、現実的(実現可能)な対象者の選定をイメージしていたこと、特にこの研究代表者が経営大学院(ビジネススクール)に所属しており、実務家とのネットワークを構築しやすい環境にいることなどから、潜在的な調査対象者の確保、並びに調査対象者へのアクセスに余計な時間・コストがかからなかったことに由来するものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の課題として、初年度に収集した定性的な情報をベースに、いかに精巧に定量的な調査・分析に落とし込めるかという点が挙げられる。この点については、早急に質問紙調査等で測定可能な項目・尺度を作成し、パイロット調査等の実施により妥当性・信頼性の検証をまずは行う必要がある。 また、研究成果については、今年度実施する定量的調査からより多くのアウトプットを出せる可能性が高まる。特に、海外の主要学術誌に掲載される水準のデータを収集し、理論や仮説とかい離のない整合性の高い論文の執筆が不可欠である。
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次年度使用額が生じた理由 |
定性的なインタビュー調査において、当初予想していたほどの費用がかからなかった。これは、研究代表者の人的ネットワークにより、在住する首都圏近辺にて、調査が実施できたことによることが大きい。同時にこの節約により、当初想定していたよりもより規模の大きいを本調査(定量調査)を実施できる可能性が見えてきた。したがって、上記節約は、次年度以降の本研究の研究規模の拡大や実質的なインパクトの増大につながるという点で、重要な意味をもつものといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度(H28)及び次年度(H29)に、企業の従業員及び経営者向けの質問紙調査を当初から計画していた。前年度の事前調査で節約できた費用は、この本調査(質問紙調査)の規模(対象企業数・従業員数)を増やして利用する計画である。
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