研究課題/領域番号 |
15K13043
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研究機関 | 鈴鹿大学 |
研究代表者 |
村瀬 慶紀 鈴鹿大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70624386)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グローバル化 / 中小・ベンチャー企業 / サービス産業 / 暗黙知 / 知識移転 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、先行研究をレビューしながら、サービス産業のBGCを分析するためのフレームワークを構築した。具体的には参入形態、経営者特性、現地での経営戦略(競合他社との関係、顧客サービスの差別化等)、現地スタッフの育成、資金調達、投資決定の基準等を細かく分析できるような指標を作成した。作成にあたっては、Cavusgil & Knight(2009)が示した「成功するボーングローバル戦略およびその他のアプローチ」をベースにサービス業に適合する形に修正を加えた。 また、同年11月は台湾崑山科技大學「国際観光文化フォーラム」にて大学生を対象に観光・サービス産業でみられるボーングローバル企業の特徴について講演する機会を得た。 例えば飲食業に関しては、日本人渡航者や海外旅行者の増大、さらには日本食ブームが背景にある。スタンディング(立ち食い)形式で高級料理が提供されることで一躍有名になった「俺の株式会社」は、創業後からわずか3年目の2015年1月に香港に和食店、その後ニューヨークにも出店を計画し、メディアでも取り上げられ、飲食業の新業態として関心を寄せている。このような事例を中心に紹介し、質疑応答を通じていろいろな意見や提案が寄せられた。 一方で、サービス産業を対象としたボーングローバル企業の抽出には時間がかかっている。特に①創業時もしくはその後2~3年という海外進出の時期、②海外進出先国の数、③サービス産業の定義、を再考し、新たなボーングローバル企業の定義づけをする必要も視野に入れている。一方で、定説を大きく変えることは現実的ではないので、来年度以降学会や研究会等で研究者と議論していくことも検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、サービス産業におけるボーングローバル企業の特徴について理解するために先行研究のレビューやフレームワークの検討を中心に行った。 特にサービス産業の特殊的な課題について検討を進めた結果、①産業特殊性から基本的には輸出産業は存在せず、合弁もしくは完全所有子会社で現地への進出を行う、②サービス産業の業種は、多岐にわたることから、サービス産業の分類を行う必要性があるのではないか、③経営者の特性、④経営環境(消費者ニーズへの対応;グローバル化もしくは現地化、ビジネスの法的・制度的枠組み、地域の商習慣等)、⑤競争優位の解明(ネットワーク、技術や資源へのアクセス、経営資源の調達と管理等)に関して、焦点を当てることになった。 既述のとおり、来年度以降の調査対象となるサービス産業を対象としたボーングローバル企業の抽出には時間がかかっている。特に①創業時もしくはその後2~3年という海外進出の時期、②海外進出先国の数、③サービス産業の定義、を再考し、新たなボーングローバル企業の定義づけをする必要も視野に入れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成27年度に検討したフレームワークを基にして実態調査を検討している。現在のところ、海外企業の調査を検討しており、量的な調査を行う予定である。 さらに、JETROに協力を依頼し、サービス産業のBGCを抽出していくことにする。さらにBGCの経営者もしくはそれに準ずる方に対して、インタビューによる意識調査を実施し、上述したフレームワークの加筆・修正を行っていくことにする。同調査では、なぜ創業時、もしくはその後まもなく海外進出を展開することができたのか、経営者の特性(国際ビジネス経験の有無、人脈を含めたネットワークの有無、経営ビジョンを含めた旺盛な起業家精神等)を中心に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、既述のとおりサービス産業のボーングローバル企業を抽出するために必要な文献調査に集中したため、実態調査に至らなかったことが第一の理由である。当初の想定よりもサービス産業におけるボーングローバル企業の数が少なく、計画書で触れた労働集約性の高い産業以外のサービス産業にも目を向けていく必要があるのではないかと再考している。もう1つの理由は、招待講演で研究成果を発表したため、当初の想定よりも旅費交通費が軽減できたことが挙げられる。次年度以降は、実態調査を積極的に行い、ボーングローバル企業の競争優位性について明らかにしていきたい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、実態調査に至らなかったことから、海外調査の旅費に充当していきたいと考えている。また、サービス産業におけるボーングローバル企業の抽出に当たっては、JETRO(日本貿易振興機構)の助力を得ることが必要なため、その調査費用にも充当していきたい。
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