本研究は「美しさ」が競争的資源となる製品を産出する上で、美しい製品を産出する為の事業モデルを、文化・社会制度等の要因も踏まえ探求した。 本年度は、ハイエンドの文化からの影響とデザインマネジメントに着目して研究を進めた。主に、セミナーの開催と学会発表に向けた調査及び学会発表を行った。セミナーについては、2017年度に引き続いて、2018年度にもフィンランドのデザイン企業であるマリメッコの服飾デザイナー大田舞氏を招聘して実施した。マリメッコはフィンランドを代表するデザイン企業である。長い歴史の中で複数のデザイナーが勤務しており、セミナーを通じて、マリメッコがどの様にマリメッコらしさを時代を超えて継承しているか、と、マリメッコ社内でのデザイナーとの関係性構築について考察した。大田氏からは、ご自身がマリメッコデザイナーに着任するまでのキャリアビルディングと、マリメッコデザイナーとしての働き方について、ご自身の経験を交えてご講演いただいた。講演の内容は論文化して、2019年秋に発表予定である。 セミナーと同時開催で、「美しいデザイン」に関するワークショップを実施した。ワークショップの内容については分析して論文化する。 これらの結果浮かび上がるのは、「美しさ」という感性を継承するために、デザイナーの意思決定が強く機能する組織づくりが重要であり、企業では規模の拡大よりもイメージの継承を優先したマネジメントが行われている姿である。本研究の成果により、「美しさ」のマネジメントは、「美しさ」だけにとどまらず、「美味しさ」など、感性製品をマネジメントする分野に見られる特徴ではないかという今後の研究に繋がる新たな視座が得られた。
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