本研究は、途上国の低所得者層をビジネスサイクルに取組むことで社会課題解決を目指すインクルーシブビジネス(IB)が、生産者と国際企業/社員に与える経済的・非経済的(社会・文化的)影響の一端を明らかにすることを目指し、ビジネスによる社会的課題解決がどの程度可能か、不利益の有無、関係アクターの役割を考察しながら持続・発展可能性への示唆を得ることを目的とした研究であった。 当初は、A社が事業を行っているキルギスとカンボジアを事例とする予定であったが、A社と相談の上、より適切と判断されたラオスの事例をキルギスと比較することになった。調査事例の変更という大きな計画変更はあったが、人口及び国土面積が類似している両国には、内陸国という地理的特徴、社会主義の経験など共通点も多く、ある意味、良い方向に研究が変更された結果となった。 研究を変更したことに伴う成果として、1)ビジネス活動に参加することで生産者の間に新たなネットワークや信頼関係が形成されていること、2)ビジネス活動への参加が女性をエンパワメントすること、3)女性生産者の仕事と家庭のバランスがビジネス活動への参加に影響を与えており、ビジネスそのものの持続可能性にも影響を与える可能性があること、などが明らかとなったことが挙げられる。明らかになった事柄については、これまで国内外の学会、研究会、組織内セミナー等で随時発表し情報発信に努め、専門家等の意見を仰いできた。今後は、論文という形での発信に向けて執筆作業を進め、英文ジャーナル等に投稿する予定である。
|