本年度は研究期間の最終年度にあたる。そのため(1)これまでの事例研究にもとづいて理論概念を精査したうえで、(2)当初の目的であったデスティネーション・マーケティングの実践に関するアンケート調査を実施した。最終的に、本研究で焦点としていた地域の観光協会を中心とする地域内外の関係性と成果との関わりを明らかにした。 第1の理論概念の精査については、欧米の研究に焦点をあてて文献を調査した。すると、米国の研究グループがデスティネーション(観光目的地)内外の関係性に焦点をあてた理論枠組みを提示していたことが明らかになった。それは、近年注目されているステイクホルダー・マーケティングの考え方をDMOのマーケティングに捉え直し、市場志向の考え方を応用してマルチステイクホルダー市場志向(MSMO)という概念枠組みを提示するものであった。 第2のアンケート調査は、米国のMSMOの測定尺度を援用した際に、日本の文脈への適用可能性を確認し、成果との関連性を把握するべく実施した。調査にあわせて、MSMO概念で取り上げられていなかった旅行代理店や国レベルのDMOに関する活動も把握し、調査票の設計を行った。調査対象は、西日本各地の市町レベルの観光協会を対象に312票の質問票を配付し、170票の有効回答を得た(有効回答率54.5%)。その結果、MSMO概念を日本の文脈へ適用するには若干の修正が必要であるとともに、入込観光客数の増加・来訪者満足度の向上という点で高い成果をあげる観光協会では、MSMOが高い値を示すことが明らかにできた。以上の研究成果は、今後すみやかに発表していきたい。
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