研究課題/領域番号 |
15K13055
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山本 昭二 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (80220466)
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研究分担者 |
西原 彰宏 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (10634272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チャネル / オンライショッピング / 消費者行動 / 物流 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的であるオムニチャネルに関する消費者行動の理解に関して、今年度は次の3点について重点的に研究を行った。 まず、オムニチャネルの現在までの研究について概観するために山本が論文を作成して研究の方向性について確認を行った。論文の焦点は、オムニチャネルが小売商を中心にして運営されていく中でO2Oと異なり、単なるプロモーション手段としてインターネットを利用するのではなく販売経路、情報提供経路として組み合わせることで最適なチャネル編成を嗜好する場合の問題点を明らかにした。 この問題点を元にして、企業に対してヒアリングを行った。百貨店企業、コンビニエンスストア、流通グループ、大型専門店などに対しておよそ10社程度のヒアリングを行い有益な知見を得た。特に大型専門店はO2Oとしてインターネットを利用しつつ、店舗と通販の関係を結びつける努力をしており、コンビニエンスストアでは物流を中心としてより顧客に近い時点での結節点の構築とコストとの両立を模索していた。この二つの事例は、現在の我が国におけるオムニチャネルの実践としては先端的なものであり、経験則とデータによる裏付けを組み合わせながらサービスの質を高めていることが理解された。他方、百貨店企業は自ら商品を仕入れないという特性から、取引先との関係を利用しながら新たなネットワークを構築するなどの戦略を採っていた。 最後に28年度に実施する予定の店舗実験の準備のために新たに調査システムを開発した。ネット上での調査を複数のデバイスで行うためにhtml5で実施可能なシステムの開発を行い、従来のPC上の実験だけではなくタブレットとスマートフォン上での実験も可能となった。そのため、店舗への出向前の実験と店舗内での実験を接続することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度に行われた研究は概ね順調に進んだ。理論的な検討に関しては、実際の企業の行動も加味して消費者行動論の知見からオムニチャネルが生成する論理を検討した。その結果を論文にまとめることができたので、これを元にしてヒアリングが実施された。その結果も主な仮説を裏付けるものであり、分析を加えて現在論文にまとめようとしているところである。オムニチャネルという現象や戦略に関して、小売商が選択する仕組みについては、特定の企業グループの戦略が研究対象となっているきらいがあったが、そうでは無いことが十分に理解された。 以上のような準備が整いながら、調査システムの構築に努めている。html5への改修は実施されたが、現状で機能の一部しか検証が進んでいないので、新たな機能の検証を進める必要がある。また、実験に協力して貰える店舗の選定を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に行われた研究の振り返りを行っており、共同研究者との連携作業を進めている。ヒアリング結果のとりまとめを夏頃までに行い、論文として投稿することを考えている。そこで問題となるのは各企業の戦略的な視点の違いであろう。 物流を中心としたオムニチャネル戦略は、既に限界に達しつつある。通販専業企業に比べて実店舗を持っている小売企業は統一的な販売戦略の策定と実行にコストがかかる。特に情報システムの構築には大きな費用を投入しており、その構造を変えることは難しいだろう。この点を克服できる戦略の構築を行っている企業の実態を引き続き調査してみたい。 28年度には当初から予定されている店舗での実験の実施が後半に予定されている。この店舗での調査の成否によって研究計画を柔軟に検討する必要がある。まず、パイロットでの調査を行い、その結果を見てシステムの改修等を引き続き行うことを考える必要がある。特にスマートフォンの画面への対応には一定の期間がかかるものと想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は精力的にヒアリング調査を行ったが、東京でのヒアリング調査計画が効率的に組めたため当初の予定通りに短期間で終了した。加えて、共同研究者が東京でのヒアリングを単独で行ったため費用の節約が可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の中心的な課題はシステムの改修と調査のために利用される予定である。具体的にはシステム改修に10万円程度を追加で支出する予定である。
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