研究課題/領域番号 |
15K13056
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤邉 紀生 京都大学, 経営学研究科, 教授 (80278481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床会計学 / 管理会計実践の経済的価値 / 理論と実践 / 中小企業管理会計 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは,次の①~⑤を反復的に実施することで、臨床会計学構想を具体化するための知見を得ることを目指している。①実践的な知識と理論的な知識の相互作用に関する管理会計先行研究の検討,②臨床的な知識の発展に関する管理会計および関連分野における先行研究の検討,③管理会計の専門職業化が進んでいる諸外国における「臨床会計学」的な知識の蓄積・体系化に関する調査,④管理会計知識を専門家として活用している実務家(管理会計専門家)に対する調査、⑤実務家とのワークショップなどを通じた研究。 平成28年度は、計画に沿って①~⑤を実施し、とくに④について、中小企業に管理会計専門家として経営アドバイスを行っている実務家に対する聞き取り調査とサーベイ調査に基づき、日本の中小企業における管理会計実践の経済的価値に関する分析を行った。本調査では、基本的な管理会計能力として,「業績評価システムを利用して経営のPDCAをまわす能力」を聞き取り調査から同定し、この意味での管理会計能力を測定するための尺度を開発し、パイロットテストを行ったうえで利用した。本調査では、管理会計専門家の協力を得ることで、専門家による中小企業の管理会計能力についての認識(expert perceptions)と現実のハードな財務データを収集し、分析に利用した。調査データを分析した結果、中小企業においても,基本的な管理会計能力を高めることで財務業績が改善しているとの仮説が支持された。、この結果は、企業規模や業種など業績に影響を及ぼすと考えられている要因をコントロールしても維持されている。また、分析によって管理会計能力と財務業績の関係は、経営状態や経営者の考え方によって左右されることが確認できた。 この調査結果は、中小企業における管理会計実践の経済的価値を示すものであり、臨床会計学構想を実現する社会的意義の基礎となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
臨床会計学構想を実現するうえで、管理会計実践の経済的価値を経験的証拠に基づき論証することはきわめて重要な意味を持っている。研究計画では、次年度以降に獲得できれば十分であると考えられていた知見が初年度で得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画以上の結果が得られたことを受け、この知見を活用しながら計画通り、①実践的な知識と理論的な知識の相互作用に関する管理会計先行研究の検討,②臨床的な知識の発展に関する管理会計および関連分野における先行研究の検討,③管理会計の専門職業化が進んでいる諸外国における「臨床会計学」的な知識の蓄積・体系化に関する調査,④管理会計知識を専門家として活用している実務家(管理会計専門家)に対する調査、⑤実務家とのワークショップなどを通じた研究、を継続する。
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