本研究は、国際競争力に陰りが見えるわが国の製造業にとって、生き残りをかけた有望な戦略のひとつとして近年注目されつつあるサービタイゼーション(製造企業が事業構成に占めるサービスの比率を高めることで、一般に製造業のサービス化と呼ばれている)の進化の過程で、管理会計システムないし管理会計情報が果たす役割を見極めるとともに、当該貢献を促進する新たなツールの開発につながる概念及びモデルの提示を意図するものであった。サービタイゼーションは、製品販売後のアフターサービスにフォーカスをおく商品開発をメーカーに促すことになる。それは、紛れもなくメーカーのビジネスプロセスの拡張を意味することから、これに呼応したコストの配分と収益の予測が必須であり、しかもこれを商品企画段階で的確に実行できなければ成功はおぼつかない。本研究では、主にサービタイゼーションを支援する各種の業績指標について検討し、それらを有機的に組み合わせた実践モデルを探究することを目論んだ。 研究調査を進める過程で、まずは海外に比べて日本の製造業のサービタイゼーションが相対的に遅れていることが明らかになり、くわえて、サービタイゼーションの対極に位置するプロダクタイゼーション(サービス業の製造業化)がグローバルに進行している現実が浮き彫りになった。換言すれば、産業のボーダレス化が進み、その背後にIoT(Internet of Things)に代表される情報技術の進化が色濃く影響していることが鮮明となった。そこで、本研究では、こうした影響に配慮して研究のフレームワークを修正し、製造業に軸足を置きつつも、産業の枠を超えた新しい管理会計ツールの要件の探索とモデル開発を中心としたリサーチを推進していった。その結果、サービタリティ・コスティング(製造業・サービス業双方に共通する品質コスト分析)の基本モデルなどを提示することができた。
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