平成27年度では、複数の商用財務諸表データベースを統合した研究データベースを構築した。1950年代の戦後のデータは、最近のデータに比較して、データの精度が低く、実証研究を困難にさせている。データベースの信頼性向上のため、商用財務諸表データベースのクロスチェックおよび有価証券報告書等の原データと照合を行い、研究用データベースの構築を実施した。戦前の統制経済下で会計制度はどのように設計、維持されてきたかについては十分な研究の蓄積がない。1930年代の商工省の産業合理化行政と会計政策(商工省財務諸表準則、計理士制度など)、大蔵省の会社経理統制、1930年代後半からの陸軍と海軍の原価計算政策に関して、統制経済と会計政策の関連性を明らかにした。黒澤清、太田哲三、中西寅雄らの会計学者たちは業種別、企業別に原価計算基準を作成した。上野道輔、黒澤清、岩田巌、太田哲三、中西寅雄、岩田巌らは「企業会計原則」の開発などを行い、第2次世界大戦後の会計制度設計においても指導的な役割を果たした。さらに、ャウプ勧告と会計プロフェッションの関係を明らかにした。従来、シャウプ勧告は、税法との関係で論じられてきたが、会計基準設定機関の設立にはシャウプ勧告が大きな支援となっており、また、シャウプ勧告は当時の会計プロフェッションの欠如を指摘し、公認会計士制度など、会計プロフェッションの醸成の契機となったことが明らかになった。
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