研究課題/領域番号 |
15K13061
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
内藤 文雄 甲南大学, 経営学部, 教授 (80188862)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 会計学 / ビジネス・リスク情報開示 / 情報監査 / 監査の質 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)ビジネス・リスク情報に対する監査手続と監査意見形成分析(ドイツ法定監査における実態調査)、(2)仮想的ビジネス・リスク情報監査における監査計画について、公認会計士に対する実験および(3)実験結果の整理とデータ化の実施を計画した。 (1)は、3種類の仮想的ビジネス・リスク情報の監査計画立案の実験を行うにあたり、予想される監査計画(監査リスクの評価、監査要点の明確化、適用する監査手続の種類・実施時期・適用範囲、監査意見形成プロセス)の内容を確認するため、また、実験結果をドイツの場合と比較検討するため、ドイツ法定監査における企業リスク情報監査(状況報告書監査)の監査手続と監査意見形成プロセスに関する規定内容を整理するとともに、ドイツの公認会計士5名および大学研究者2名と面談し、質問および意見交換により、その監査の実態を確認した。 かかる面談調査の結果、状況報告書監査は、フレキシビリティが高く、公認会計士5名に対する調査では普遍性のある結果を得られないとの指摘があったため、WEBによるアンケート調査(ドイツ公認会計士458名を対象)を実施した。調査にあたっては多数の回答を得るべく慎重を期したが、結果として20件の回答数にとどまった。なお、458名の対象者の選別は、前年度に入手したデータではなく本年度に新たに入手した最新の営業報告書データに基づいた。 以上の結果、(2)の実験を有意に実施するための監査計画立案に関する諸条件を確定するに足るだけの回答数がなく、当該実験を実施できなかった。しかしながら、回答数こそ少ないものの、ドイツの公認会計士5名と大学研究者2名から得た知見および20件の詳細な回答結果を入手できたことから、実験に代えて、これらの知見・回答結果を分析することによって、本研究が目的とする「監査の質の計測」のモデルを形成することとし、現在その分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」において説明した通り、当初の研究計画をすべて予定通りに実施したとは言えないものの、ドイツ出張による面談調査の結果を踏まえて、研究目的の「監査の質の計測」が達成できるように軌道修正を行い、研究を実施した。この意味から、「おおむね順調に進展している」と判断した。 なお、前年度から繰り越した研究費は、ドイツ出張における通訳者の費用やWEBアンケートの翻訳・校閲費用の一部に充当した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本年度においては当初の研究計画を一部変更したが、先行研究では得られていない、ドイツ上場会社の状況報告書に対する監査に関して新奇のデータを入手できており、これを十分に活用し、分析することにより「監査の質の計測」にかかるモデルを引き続き構築する。その上で、(1)仮想的ビジネス・リスク情報における監査手続・監査意見形成プロセスの差異分析、(2)差異分析結果を利用した監査の質の計測、(3)研究成果の総括と社会への発信を行い、「監査の質の計測」に資する研究成果を獲得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰越額を使用したのち、前倒し支払請求を行い、次年度使用額の使用を予定した。しかし、ドイツでのWEBアンケート調査による回答数が極めて少なく、日本と比較検討するに足る回答数ではなかったことが前倒し請求後に判明した。このため、次年度使用額を前倒し請求した理由である、「WEBアンケート(ドイツ語版)を有効に活用し、同一内容で日本の公認会計士に対しても調査を行うことが経費の合理性からも研究の発展性からも必要と考えるため、日本語でのWEBアンケートの費用分を前倒しで使用すること」について、使用の合理性がなくなったため、日本でのWEB調査を見送った。これにより、次年度使用額が生じた次第である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、次年度に予定している、本年度までの研究成果を踏まえて「監査の質の計測」にかかるモデルを構築し、その上で、(1)仮想的ビジネス・リスク情報における監査手続・監査意見形成プロセスの差異分析、(2)差異分析結果を利用した監査の質の計測、(3)研究成果の総括と社会への発信について、各種ソフトウエアを用いた分析や学会等出張旅費、研究補助者謝金等に使用する予定である。
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