H28年度に計画した公認会計士に対する実験研究は、監査計画立案に関する諸条件を確定するに足るだけの回答数がなく、当該実験を有意に実施できなかった。回答数こそ少ないものの、ドイツの公認会計士5名と大学研究者2名から得た知見および18件の詳細な回答結果を入手できたことから、実験に代えてこれらの知見・回答結果を分析することによって「監査の質の計測」のモデルを形成することとした。結果として当該モデルを客観的な根拠データに基づいて形成ができなかった。そこでH28年度に入手した回答データをもとに、研究代表者が参画している日本公認会計士協会「品質管理を中心とした自主規制の在り方研究会」の公認会計士委員3名と面談し当該計測の可能性について意見交換を行った結果、我が国では財務諸表監査の実施にかかる監査時間数や具体的な監査判断内容に関するデータは守秘義務の観点から入手不可能であることから監査の質を直接に計測することはできないとしても、監査の質をどう規制しているかの状況を明らかにできれば、間接的に監査の質のレベルを推測することができるのではないかとの結論に至った。 かかる結論に基づき、H29年度は、次の2つの研究課題を新たに実施し「監査の質の計測」に資する研究成果を入手した。 ① H28年度調査はドイツの経済監査士(公認会計士)を対象としたことから、ドイツにおける監査の質を確保するための監査制度での規制の状況を明らかにすること ②「監査の質」を定義したうえで、それに影響を与える諸要因を明確化し、我が国の公認会計士全員に対するアンケート調査に基づき諸要因の影響の重要性を分析すること ①につき『産業経理』に論稿として公刊した。また、②につき日本公認会計士協会同上研究会が平成30年2月16日に公表した「品質管理を中心とした自主規制の在り方研究会報告書」において報告書作成分担者の立場で明らかにした。
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