研究実績の概要 |
27年度には,2015年SSPデータを利用して,拡張δ区間モデルの検証を行った.拡張δ区間モデルは,準拠集団選択プロセスをモデル化した理論で有り,従来の所得分布一次元に基づくタイプから,年齢分布との同時分布を考慮した拡張型により,他者所得予想値を説明する.モデルの基本仮定は以下の通りである.1. 二次元の確率変数(X, Y)を考え,その同時確率密度関数をf(x,y)とおく.Xが年齢の分布を,Yが所得の分布を表している. 2. (x,y)で確率変数(X,Y)のそれぞれの実現値を表す.3. 年齢がxである個人は, 年齢が[x-δ, x+δ]の範囲内にある他者を準拠集団を選択し,準拠集団と自分の《所得》を比較する.4. 準拠集団の平均所得はXに対するYの条件付き期待値, E[ Y | x - δ < X < x + δ]で与えられる. 5. 収入に対する満足度は, 自分の所得yと準拠集団平均所得 y*=E[ Y | x - δ < X < x + δ]の関数として決まる: u(y, y*) 6. 収入に対する満足度は, y*が大きいほど減少する.
2次元に拡張されたδ区間モデルは,1次元のδ区間モデルの自然な拡張であり,基本仮定に大きな違いはない.ただし個人の特徴を表す分布として所得だけでなく年齢も考慮しているため,準拠集団の平均所得が単なるYの条件付き期待値ではなく, Xで条件付けられたYの期待値となる点に注意しなくてはならない.データを解析した理論的予想が正しいことが判明した.
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