研究課題/領域番号 |
15K13063
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 行真 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60455110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コミュニティ / ネットワーク / 広域避難 |
研究実績の概要 |
本年度は双葉郡、とりわけ富岡町出身の原発事故避難者により形成された、場所が固定化されない「広域自治会」とその比較対照としての「仮設自治会」におけるコミュニティの実態と課題についての調査を行った。調査方法としては2012年度から継続的に進めているリーダー(自治会長)と交流サロン関係者への聞き取り調査、そして広域自治会員、仮設自治会員を対象にした質問紙調査である。前者の調査項目としては「自治会の変化と現状」、「自治会の課題」、「行政・支援団体等組織との関係」、「今後の展開」であり、後者については2012年夏に実施した「震災前の地域との関わり」、「震災後の広域/仮設自治会との関わり」、(広域自治会では)「現居住地における自治会との関わり」、「今後の帰還・帰町意向」と設定した(質問紙調査に関する単純集計表はhttp://tohokuurban.web.fc2.com/を参照)。 現段階の帰結の一つとして、富岡町民で形成されている広域自治会である、郡山方部居住者会(郡山市)、さくらの会(いわき市)、すみれ会(いわき市)の結果を次に示す。会員が広域自治会に期待するのは「現在の区等の情報提供」(特に郡山方部居住者会で多い)、「賠償に関する情報提供」、「飲み会や旅行等の交流会・懇親イベント開催」(郡山方部居住者会でのニーズは少ない)。会員の生活上の問題点として、「名前を知らない」、「住んでいる地区と交流がない」、「住んでいる地区のことがわからない」、特に郡山方部居住者会では「自治会のルール不明」、「世代間のズレ」が多い。各会長は広域自治会について、「次の生活」への対応(郡山方部居住者会)、会員外ネットワーク充実への対応(さくらの会、すみれ会)の必要性を認識している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究におけるフィールドを主に双葉郡富岡町に定めており、基礎的な文献調査や広域自治会/仮設自治会を対象にしたアンケート調査も今年度で完了している。インタビュー調査については、富岡町のほぼ全ての仮設自治会、広域自治会、更には町設置の交流サロン関係者などを対象に延べ30名以上実施しており、予定をほぼ達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き双葉郡(富岡町、楢葉町等)出身の広域自治会員、仮設自治会員、交流サロン関係者を調査対象にする。 今年度は前年度に実施したアンケート調査で「聞き取り調査協力可能」な広域自治会員(さくらの会、すみれ会、郡山方部居住者会)約70名を対象に聞き取り調査を進める。具体的には震災前の区会(第一の場)、現居住地の自治会(第二の場)、広域自治会(第三の場:サードプレイス)への関与やその考え方、帰還・帰町を含めた今後について等である。 更には会員数の減少により解散した広域自治会(さくら会in柏崎)の歴史について、収集した基礎資料をもとに元会長等への聞き取り調査を行い、第三の場の意義とその変遷、更には役割の終焉とその要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた理由としては「旅費」、「謝金」、「その他」である。 「旅費」については校費との兼ね合いで旅費が節約できたこと、謝金についてはアルバイト学生の都合により後期から入ったため、その他については年度末刊行予定だった報告書の作成が遅れているからである。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた報告書作成を夏までに進めることで執行可能であると考える。
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備考 |
GT表、調査報告書を掲載している。
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