研究課題/領域番号 |
15K13064
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
藍澤 淑雄 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (20722317)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脱農業化 / 補完性 / コミュニティ / 社会変容 / 恩顧主義 / 互酬性 / 多機能性 / 社会的・経済的連続性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である零細鉱業を取り巻く社会構造の解明のため、2015年度は零細鉱業の支援体制と零細鉱業の主要アクターについて研究を行った。2016年度はさらに研究対象を拡げ、①零細鉱業と鉱山コミュニティの関係性、②零細鉱業者の主要アクターとそれを取り巻く他のアクターたちの関係性を明らかにするために、タンザニアのゲイタ鉱山地区でフィールド調査を実施した。2016年度は次の三つの視点から研究を進めた。 一つ目は、脱農業化における零細鉱業の主業化という視点である。この視点からコミュニティの生業である農業と零細鉱業がそれぞれどのような相互補完性をもっているのか、零細鉱業が主業化することによりコミュニティにどのような変化がもたらされたのかという点について検討した。 二つ目は、零細鉱業の主要アクターとそれを取り巻く他のアクターたちの間に生じている恩顧主義という視点である。零細鉱業者とエネルギー鉱業省の行政官、零細鉱業者と村の幹部の二つの関係性に着目し、その関係性に影響している共通の互酬性について検討した。 三つ目は、零細鉱業の多機能性という視点である。零細鉱業は生計手段という役割をこえて、地域住民の社会的なつながりを形成する手段にもなっていることを明らかにした。 具体的な成果としては、これらの三つの視点から論文を執筆し公表を目指していることである。また論文の内容に関して学会などで広くコメントや意見を求める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度の当初計画では、零細鉱業のアクターと地域コミュニティとの社会的関係性を明らかにすることを目標とした。そしてその目標達成を目指し、ゲイタ金鉱山地区を対象としたフィールド調査を行い、構造化インタビューにより2015年度とは別の約160のサンプルからなるデータセットを構築した。これらのサンプルとなった調査対象者からは、非構造化インタビューを通じた定性的な情報も収集した。またフォーカスグループインタビューも行いながら多様な視点から補完情報を集めるよう努めた。以上の収集情報を基に分析を行い、先述の三つの視点から零細鉱業のアクターと地域コミュニティとの社会的関係性を明らかにした。そのうえで論文にまとめて公表を目指している。 なお、インフォーマル・セクターの零細鉱業者については昨年度と同じ理由により、組織的に情報収集するのは困難であるという判断から、非構造的なインタビューを行うにとどめている。このためインフォーマルな零細鉱業者とフォーマルな零細鉱業者の比較検討をするのが難しい状況に変化はない。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、これまでのフィールド調査の結果を踏まえて、零細鉱業者に対する支援はどのようにあるべきかについて検討する。ここまでの研究で、零細鉱業が住民の経済的、社会的要求を充たしながら地域に根付いていることを明らかにしており、これを踏まえて政府は国家開発のために零細鉱業をどのように位置づけるのか、どのような支援のあり方が必要とされるのかについて考察したい。そのために最終年度も現地調査を行いながら関係者の意見を聴取する予定である。
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