本研究の目的は零細鉱業を取り巻く社会構造の解明である。そのために2015年度と2016年度には、①零細鉱業の支援体制と零細鉱業の主要アクター、②零細鉱業と鉱山コニュニティの関係性、③零細鉱業者とそれを取り巻く他のアクターたちの関係性について明らかにした。 2017年度は2015年度と2016年度の調査結果からえた理解を基礎にして、零細鉱業者の多様性と地域とのかかわりについて調査するため、タンザニアのゲイタ金鉱山地区でフィールドワークを実施した。 その結果、鉱山地区に定住している零細鉱業者と移動性の高い鉱山地区外から流入してきた零細鉱業者の間には、鉱山地区周辺コミュニティとのかかわりあい方が異なることがわかった。零細鉱業者は地域に定着しているほど、採鉱場を含むより広域な地域社会とのつながりの中で生活をしており、そうでないほど、採鉱場という閉鎖的な社会的関係の中で生活している可能性が確認できた。ルワンガサ地区の定住者においては零細鉱業者が属する集落に農地を有していること、あるいはその土地を利用し農業に従事していることが、集落における社会的関係性を強めている可能性が示唆された。一方で地区非定住者関しては農地を有さないことから、生計・生存リスクを回避するためには、身近な知り合いやブローカーに頼らざるを得ないため、それが採鉱場における社会的関係性の強さという形で表れていることも示唆された。 この結果についてはさらに研究を深めながら論文にとりまとめることを目指している。学会などで関係者にも広くコメントや意見を求める予定である。
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