研究課題/領域番号 |
15K13068
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀江 典生 富山大学, 研究推進機構極東地域研究センター, 教授 (50302245)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロシア / 移民 / 境界維持 / 外国人労働者 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実施においては,文献調査と質的調査準備を行うことと計画されていた。文献調査においては,ロシア労働市場における移民の集住地点として,市場(いちば)に着目し,その場所(locality)がどのように移民もしくはホスト社会によって境界づけられるのか,また,その場所にかかわるアクターによってどのようにその場所の位置づけが変化するのかについて,理論的基礎となる文献の収集を行った。 また,モスクワの市場との比較対象として,シベリアの中核都市イルクーツクにおける中国人市場に着目し,その中国人市場がかつて形成していた境界がどのように中国人商人,クルグズスタン商人,ロシアの地元の資本家,そしてイルクーツク市民の交流によって溶解しているかを調査するために,イルクーツク国立大学の研究グループとともにフィールドワークを行い,フィールドワーク実施後もイルクーツク国立大学の研究グループとの討論を継続的に行った。その結果,イルクーツク国立大学K.Grigorichevと共著論文としてフィールドワーク調査の成果を作成するとともに,イルクーツク国立大学の研究グループが主導するエスニック市場に関する論集を刊行することができた。この一連の調査結果に係わる研究成果発表を国際会議等で行った。また,2015年1月より導入されたロシアの外国人労働者管理に関する法改正を行が中央アジア移民労働者の動向にどのような影響を与えているかを分析する必要に迫られ,その分析の成果を『ユーラシア研究』誌に掲載した。 ロシア科学アカデミー社会政治研究所および東フィンランド大学ロシア境界研究セ ンターとのモスクワおよび中央アジアでの質的調査実施のための質的調査準備については,本プロジェクト海外研究協力者が富山大学に集合し,研究打合せを8月に行ったが,再度打ち合わせを行うことで合意した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の予定通りおおむね順調に進行している。移民の集住やその集住場所のpositionalityの変化についての文献収集は進んでおり,また,質的調査のための海外研究協力者との研究打ち合わせを予定どおり実施した。 成果面では,本研究のエッセンスが十分に反映された論文が,ロシアで共著刊行物として出版されるなど,重要な成果を生み出すとともに,和雑誌での近年のロシア移民政策の動向とその帰結についての論考を発表している。 そのほか,国際会議での報告は4件(うち,2件は招待講演)あり,そのほかの学会および研究会での講演2件となっている。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進んでいると評価することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,モスクワおよびタジキスタンでの質的調査準備のための海外研究協力者との研究打ち合わせを再度行い,調査ガイドラインの作成,および質的調査の実施を目指す。その過程で必要となるさらなる文献調査を行うとともに,過去に蓄積している質的調査データも含め,分析を進めていく予定である。 さらに,平成27年度で協力関係を構築できたイルクーツク国立大学研究グループとの連携は,当初の想定を上回る成果を出すことができたために,当初計画にはなかったが,今後も連携を維持し,必要となれば,平成28年度に海外連携研究者とともに調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,ワークショップ・研究打ち合わせを海外研究協力者が集まりやすいモスクワ市もしくはフィンランド・ヨエンスー市で開催する予定であったが,平成27年は日本でInternational Council for Central and East European Studies (ICCEES)の世界大会が開催され,そのために海外研究連携者が来日し,富山大学で研究打ち合わせを行ったために,当初予定していた外国旅費が残った形となった。年度内に,再度研究地合わせをヨエンスーで開催することになっていたが,フィンランド側・ロシア側との日程調整がまとまらず,その実施が次年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に執行予定であった海外旅費分を利用して,平成28年度にフィンランド・ヨエンスーでの研究打ち合わせ等の外国旅費に早い時期に使用する予定である。
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