現在、インターネット利用の増大とその利用法の多様化を中心に、人々の情報メディア利用は大きな変動期を迎えている。特に注目すべきは、同じ情報が異なったメディアを通して流通し、新聞、テレビ、ラジオそしてインターネットといった、情報伝達技術別に人々の情報行動を考える意味がなくなりつつある点である。今や情報経路はフレキシブルに選択されるもの、さらには恣意的に利用されるものとなり、かつての情報伝達技術別「メディア」概念(それはある種の社会性を生み出すものであった)は分析単位としての有効性を失ったと考えられる。本研究では、これに変わり、情報の出どころと受け手の間に構築される関係こそが意味のある社会情報分析単位ではないかと考え、これを「人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成されるメディア」と呼ぶこととし、この概念の成否を検討した。 初年度(H.27)は、同人誌のフリーマッケットとして40周年を迎え、わが国オタク文化の生成と発展をリードしてきた「コミック・マーケット」について、主催団体の協力を得て、質問紙調査・聞き取り調査・グループインタビュー調査を行い、人的組織・場として具体化された「人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成されたメディア」としてのコミック・マーケットを分析した。 2年目(H.28)は、この年行われた参院選においてモニター調査を行い、右翼メディア/左翼メディアといったものと、それに繋がるオーディエンスの集団として「人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成されるメディア」が成立していると言ってよいか検討した。 最終年度(H.29)は、前年度の調査を補足すべく、急な解散を承けて行われた衆院選における人々のメディア利用調査(モニター調査)を行った。サンプル数は500で、自民・公明支持層と立憲・共産・社民支持層の間で、一定のメディア利用の相違は見いだせた。
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