研究課題/領域番号 |
15K13076
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
羽田野 真帆 常葉大学, 健康プロデュース学部, 講師 (90635038)
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研究分担者 |
照山 絢子 筑波大学, 図書館情報メディア研究科(系), 助教 (10745590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 障害のある教員 / 障害教員 / 教師研究 / 教師のライフヒストリー / 合理的配慮 / 障害学 / チームエスノグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「障害のある教員(障害教員)の教職生活における経験」と「障害教員に対する合理的配慮の実態」を明らかにすることである。初年度である平成27年度には11名の障害教員にインタビュー調査を実施した。また計6回の研究会を開催し、調査結果のふり返りと理論的枠組みの検討を行った。さらに11月には障害学会大会において研究報告をおこない、多くの研究者から貴重なフィードバックを得ることができた。加えて、外国籍教員を対象に調査研究をしている研究グループと合同研究会を開催し、研究成果の共有と研究交流をおこなった。 これらの研究活動を通じて、これまでに以下の2点を明らかにすることができた。1点目は障害教員の経験が非常に多様であるということである。障害教員を対象とした先行研究は、その数自体が限られており、その多くは特定の障害種の教員を対象としていた。それに対して本研究では、多様な障害種・経歴の教員にアプローチできたことから、障害教員の経験の多様性を描き出すことが可能となった。同じ障害種にくくられる教員同士であっても、自身が受けてきた教育や勤務校の違いによって、教員としての経験も異なる。このことは「障害教員に対する合理的配慮」を検討する上でも非常に重要な知見である。障害教員の経験が多様であるからこそ、合理的配慮の前提となる建設的対話の重要性が示されることとなるからである。 加えて「障害教員」というテーマ自体が多様な論点をはらんでいることも明らかになった。合理的配慮に関わる議論に加えて、制度的課題、同僚教員との関係性、教員の職業的社会化、教員という職業と「障害」の関係性、当事者組織の意義、調査方法をめぐる論点等、学術的に重要な論点が多く浮かび上がってきている。そこで2年目以降は研究計画を一部変更し、データの分析と成果発表に重きをおくこととした(「今後の研究の推進方策」において詳述する)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画以上に進展した理由として、予定よりも多くの、そして多様な経歴の調査対象者にアプローチすることができたことが挙げられる。本研究の開始時には数名の教員に調査協力の了解を得ていたものの、調査対象者の障害種別や勤務校等の多様性を確保できるかどうかは未知数であった。しかし結果的には関連する専門分野の研究者や調査対象者からの紹介を通じて、多様な障害種・経歴の11名の教員に対してインタビュー調査を実施することができた。当初計画では、3年間の研究期間のうち2年間をかけてインタビュー調査を実施する予定であったが、その計画を一部変更するとともに研究計画を前倒しすることとし、研究費の前倒し支払申請をおこなった。 また当初の計画通り、中間報告として11月の障害学会で研究発表をおこなうことができたほか、関連する研究分野の研究グループとの合同研究会や学内研究会での研究報告など、成果発表や研究交流の機会を多く得ることができた。初年度から、本研究に対する他の研究者からの貴重なフィードバックを得られたことが研究の進展につながっている。結果的に研究開始時の想定よりも多くの論点が浮かび上がったことから、2年次以降は当初計画よりも多くの研究報告を実施することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、当初の研究計画を一部変更するとともに全体的に研究計画を前倒しし、2年目以降はデータの分析と成果発表に多くの時間と予算を費やすことを計画している。 当初計画では、(a)障害教員へのインタビュー調査と、(b)障害教員が勤める学校関係者ならびに教育委員会関係者へのインタビュー調査の2つの調査を実施することを予定しており、2年目となる平成28年度には (b)関係者への調査を進めることを計画していた。しかし前述のとおり、初年度の調査から①障害教員の経験が非常に多様であること、②障害教員というテーマ自体が多様な論点をはらんでいることが明らかになった。さらに、学会での研究報告や他の研究者との意見交換を通じて、本テーマについて多角的な視点から議論を展開することに学術的な意義があると認識するに至った。そこで研究計画を変更し、本研究では(a)の調査に焦点をしぼり、(b)の調査については補足的に実施することとした。 平成28年には、障害教員へのインタビューを継続しながら、研究会を開催し、調査結果の分析と理論的検討をすすめる。さらに、3学会での研究報告(教育社会学会、日本社会学会、障害学会)を予定しているほか、関連学会への論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりもインタビュー調査を多く実施できたこと、遠方の調査対象者が多く調査旅費の支出が増えたことから、研究費の前倒し支払申請を行った。申請当時は年度後半に更なるインタビュー調査を実施する計画であったが、結果的に前払い支払決定後に新たな調査を実施することができなかったことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し申請をおこなったことから次年度使用額が生じたものの、交付申請時の研究実施計画通りに研究を遂行することができている。研究計画の一部変更により、平成28年度はインタビュー調査に関わる支出が当初計画よりも減る見込みではあるが、同年度に3学会での研究報告を予定していることから、成果発表にかかる旅費等の支出が増える予定である。
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