2017年度は、2016年度に引き続き弁護士を対象としたインタビュー調査をおこなった。この一連のインタビューを通じて弁護士の労働環境に関わる4つの視点を得た。 最初は経済的問題である。「需給のアンバランスから所得が減少している」、「以前なら受けなかったケース(勝つ見込みあるいは報酬額が少ない、手続きが煩雑であるなど)を受けざるをえないため、多忙感が増している」「法テラス制度を使った依頼など、報酬が少ない仕事が増えている」、「大事務所と中小事務所との格差が拡大している」などの意見があった。 2つめは若手弁護士のキャリアの問題である。「弁護士事務所の採用数が少なく、司法修習後の就職先が見つからない」、「司法修習後、事務所に就職せず独立する(即独)、事務所の諸経費のみ負担して個人で仕事をおこなう(ノキ弁)が増加している」、「即独、ノキ弁を選択した弁護士は、事務所に雇用され、経営弁護士や先輩弁護士から指導を受ける弁護士(イソ弁)に比べて、スキルの習得が難しい」などの意見があった。 3つめは、女性弁護士数が急増している(2000年:全体の8.9%、2016年全体の18.3%)ことを背景としたジェンダー格差の存在である。「弁護士事務所、特に中小の事務所は男性中心の採用をおこなっている」、「日本弁護士連合会(日弁連)、地域の弁護士会の役員は男性中心である」、「ジェンダー格差については、女性でも世代間により認識の差がある」などの意見があった。 最後は弁護士業務固有の問題である。「依頼者との関係が大きなストレス因である」、「事務所内の人間関係が大きなストレス因である」、「先輩・同僚弁護士からのソーシャルサポートが得られないと苦しい」、「依頼者の都合で急な業務や休日や夜間対応に従事せねばならず、ワークライフバランスの維持が難しい」などの意見があった。
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