研究課題/領域番号 |
15K13079
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
有薗 真代 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (90634345)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハンセン病 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジア各地における難病患者・回復者のコミュニティにおける生活実態や相互扶助的な実践のあり方を内在的視点から実証的に分析することによって、急激なグローバル化を経験している発展途上国の病者らが、過度な葛藤や軋轢に巻き込まれず、相互扶助システムと公的援助システムの最適な混合形式(ベストミックス)をいかに構築しうるかに関して、実践的な認識枠組みを提示することにある。 この目的を達成するために本研究は、日本国内と、インドネシア・タイ・フィリピンを戦略的な調査対象地に設定し、(1)難病回復者のコミュニティにおけるフィールドワークと関係研究機関における資料収集を通して、アジア各地における難病回復者の生活実態や<下から>の相互扶助の動態を実証的に解明するとともに、(2)コミュニティが急激なグローバル化の波にさらされるなかで、回復者達が従来から培ってきた相互扶助システムと各国・地域の公的援助システムの間にどのような葛藤が存在するのかを分析し、さらに(3)地域的文脈をふまえた両システムのベストミックスを提案する。 今年度の主たる研究実績として、米国での一次資料収集の成果を挙げることができる。今年度、私は、主たる調査対象のひとつであるフィリピンの病者・障害者コミュニティの歴史を詳細に調べるため、旧宗主国であり第二次世界大戦後も同国を強い影響下においた米国にて、一次資料調査を実施した。調査先は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(一部同アーバイン校)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、主に、UCLAのSoutheast Asia Studies Centerをはじめとする各地域研究センターや、同Southern Libraryをはじめとする各図書館など、UCLA(および一部UCI)各所が分散所蔵している関係一次資料を探索し、閲覧と収集を行なった。 資料調査の過程で、フィリピンの当該コミュニティの歴史は、環太平洋規模におよぶ20世紀米国(アメリカ帝国)の医療・衛生戦略の展開のなかでとらえられねばならないこと、したがって同時期(世紀転換期)に米国によって併合または植民地化されてきた、ハワイ、グアム、米領サモア、プエルトリコなどにおける医療・衛生戦略と密接に連関していることとその関係性が明らかになった。以上の状況を鑑みると、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、米国にて必要な一次資料を収集することができた。今後は、日本国内と、インドネシア・タイ・フィリピンでのフィールドワークを行う。このフィールドワークのさいにおこなうことは、(1)難病回復者のコミュニティにおけるフィールドワークと関係研究機関における資料収集を通して、東南アジア各地における難病回復者の生活実態や<下から>の相互扶助の動態を実証的に解明すること(2)コミュニティが急激なグローバル化の波にさらされるなかで、回復者達が従来から培ってきた相互扶助システムと各国・地域の公的援助システムの間にどのような葛藤が存在するのか分析すること、この2点である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ滞在時の旅費・滞在費等にかんする精算を、まだ終えていないため。現在、アメリカ現地の業者との交渉を進めている。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカ現地の業者が領収書等の発行をおこないしだい、精算の手続きを行う。
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