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2016 年度 実施状況報告書

病者の相互扶助と「下から」の社会保障構築:国際比較に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 15K13079
研究機関明治学院大学

研究代表者

有薗 真代  明治学院大学, 社会学部, 研究員 (90634345)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードハンセン病 / 東南アジア
研究実績の概要

申請者はこれまで、世界各地で社会的排除と差別の対象になってきたハンセン病者や結核患者らが、排除や差別のシステムをどのようにわたりあい、いかにそうしたシステムを改変してきたのかという問題関心のもとに、実証的な調査研究を積み重ねてきた。
申請者は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校アジアン・アメリカン研究学部に客員研究員として滞在したさいには、東アジア・東南アジアにルーツをもつ多様な人文・社会科学分野の研究者と日々交流しながら、日本のハンセン病者の歴史やコミュニティについての研究報告をおこなうとともに、東南アジアのハンセン病者や結核患者のコミュニティにかかわる資料調査を実施した。また、米国の環太平洋規模の医療・衛生戦略についても資料調査を行った。
申請者は、2016年度は、これまでの調査研究を単著として公表するための準備を行なっていた。2017年5月に、これまでの調査研究をまとめた調査実績として、単著『ハンセン病療養所を生きる-隔離壁を砦に』(世界思想社)を刊行した。本書では、戦後日本のハンセン病療養所における集団的な活動(自治会や患者運動などの政治的活動、療養所内の文化的活動、相互扶助などの生活実践)の生成・展開過程について、それぞれ詳細な調査を実施し、これらの活動・実践が療養所入所者自身の生活の改善や療養所システムの再構築に与えた意味・影響について綿密な分析をおこなった。
また申請者は日本国内にとどまらず、東南アジア各地のハンセン病関連施設・地域での調査も実施してきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度は、現地調査は予定どうり順調に進めることができた。そして、これまでの調査結果をまとめた集大成として、世界思想社より単著『ハンセン病療養所を生きる』を刊行することができた。そのため、本研究課題の現在までの進捗状況は、当初の計画以上に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

これまで申請者は、対象地域の旧宗主国での資料収集と、現地調査のための予備調査を主に行なってきた。今後は東南アジア各地でのフィールドワークを展開していく。
東南アジアには、ハンセン病などの伝染病(元)患者や、身体障害を抱えた人々が集まって共同生活を営むコミュニティ(「定着村」)が数多く点在している。これらのコミュニティで暮らす人々は、病が治癒しても故郷や家に帰ることができず、病院や療養所の周辺地域にそのまま定住したり、あるいは一般社会から離れた場所(山奥や孤島など)に村落を形成したりしながら、自らの労働と生活の場をつくる実践を脈々と続けている。
東南アジアには、このようなかたちで伝染病(元)患者によって形成された村落が無数にあるといわれるが、定着村を調査対象とする実証研究は、ほとんど実施されていないのが現状である。
本研究では、各地の定着村を調査対象地として、フィールドワークを実施する。加えて、ハンセン病回復者の公的組織や、他の難病患者・回復者の当事者団体への聞き取り調査を実施する。患者・回復者の生活実態や相互扶助的な生活・労働実践の動態について、各地域で詳細な調査を展開する。

次年度使用額が生じた理由

単著刊行にむけての必要な調査を行うため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

単著刊行にむけての必要な調査を行う。具体的には、ライフヒストリーを掲載してよいかどうかの最終確認や、正誤確認、資料の最終的な確認などのための旅費等に使用した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 施設で生きるということ 施設生活者の戦後史からみえてくるもの2016

    • 著者名/発表者名
      有薗真代
    • 雑誌名

      世界

      巻: 887 ページ: 49-55

  • [図書] ハンセン病療養所を生きる 隔離壁を砦に2017

    • 著者名/発表者名
      有薗真代
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      世界思想社

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公開日: 2018-01-16  

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