2017年度は、2005年から2016年まで実施してきた調査研究結果をまとめ、単著『ハンセン病療養所を生きる―隔離壁を砦に』(世界思想社)を刊行した。本書では、戦後日本のハンセン病療養所における集団的な活動(自治会や患者運動などの政治的活動、療養所内の文化的活動、相互扶助などの生活実践)の生成・展開過程について詳述したほか、これらの活動・実践が療養所入所者自身の生活の改善や療養所システムの再構築に与えた意味・影響について、綿密な分析をおこなった。同書は、紀伊國屋じんぶん大賞2018の第7位に入選したほか、新聞・書評紙・学会誌で多数の書評を得るなど、高い評価を受けることができた。 また本年度は、2015年度に客員研究員として滞在していたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(CCLA)におもむき、テラサキ日本研究センターが主宰する"4th Trans-Pacific Workshop"にて、"Formation of the Social Movements in the National Sanatorium for Hansen’s Disease in Japan"と題して、ハンセン病者の管理・コミュニティ・社会運動の日本的特徴について研究報告をおこなった。また、UCLAのSoutheast Asia Studies Centerをはじめとする各地域研究センターや、同Southern Libraryをはじめとする各図書館において、東南アジア、米領ハワイ・旧米信託統治領ミクロネシアのハンセン病者や結核患者のコミュニティにかかわる資料調査を実施した。
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