研究実績の概要 |
本研究の目的は、社会意識形成メカニズムを解明しその実態を記述するために、ベイズモデルを応用した分析モデルを提案し、主に所得分布イメージと所得評価に関する経験的データの分析に応用することである。 2018年度は、ベイジアン社会意識分析のこれまでの成果をまとめ発表するとともに、今後の継続研究プロジェクトにつながる研究を行った。 第一には、これまで継続的に行ってきた階層帰属意識についてのベイジアン社会意識分析の成果を、The 19th World Congress of the International Sociological Associationにて口頭報告した。また、成果をまとめた論文を『理論と方法』(2018, 33(2))誌上に発表した。ランダムウォークプロセスを仮定する意識生成過程を想定し、帰属意識分布の生成メカニズムを理論的・経験的に検討するとともに、戦後日本における階層帰属意識の変化を分析した。 第二には、新たなモデリングの試みとして、収入評価のベイジアン社会意識分析を実施した。具体的には、収入評価の形成メカニズムとして、単純な他者比較のメカニズムを組み込んだトイモデルを構成し、2015年階層と社会意識全国調査(SSP調査)データから観察された収入評価の分布をベイズ統計モデリングによって説明することを試みた。この成果を第67回数理社会学会にて報告した。 第三には、ベイズ統計モデリングの社会科学における普及と発展を目指すために、新たな研究プロジェクトを立ち上げ、テキストの企画と執筆を開始した。このプロジェクトは、2019年度以降は分担者として参加する科研プロジェクト「ベイズモデリングによる実証的社会科学理論の刷新」(19K02065)へと発展的に継続することになった。
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