研究課題/領域番号 |
15K13098
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
新藤 こずえ 立正大学, 社会福祉学部, 講師 (90433391)
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研究分担者 |
岩田 美香 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (30305924)
中村 尚子 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (70386514)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的養護 / リービングケア / アフターケア / ライフコース |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的養護の対象となっている障害のある子どもの施設ケアと、退所後のサポートのあり方を検討し、従来の社会的養護に欠けていた支援を補うことを目的としている。平成27年度は、支援者のヒアリング調査として、児童養護施設の施設長、職員、特別支援学級の教員を対象に施設や学校における支援とリービングケア、アフターケアの実態についてヒアリングを実施した。また、児童養護施設で生活していた経験のある障害当事者へのヒアリングを実施した。加えて、関係組織・団体へのヒアリング調査として、生活困窮者支援団体の職員に、支援対象となっている人々のなかで、とりわけ社会的養護の対象となっていた障害のある人に対する支援の実態についてヒアリングを行った。 支援者へのヒアリングでは、生活施設である児童養護施設と教育機関である学校が連携して進路指導や保護者への対応を実施しており、子どもが卒園した後も、引き続き連携しながらアフターケアにあたっている事例がみられた。児童養護施設ではアフターケアが業務に位置づけられているものの、制度的裏づけはなく、施設や教員の自助努力に委ねられている側面が大きいことが示唆された。また、障害当事者のヒアリングでは、児童養護施設への措置後、普通学級から特別支援学級に移る過程における障害受容の葛藤や施設職員との信頼関係、卒園後の障害者雇用による就職が当事者にとって重要であったことが語られた。加えて、生活困窮者支援団体においては、障害があるという認識がなく、必要な手立てがなされないままに青年期を送り、ホームレス状態になるなど、団体が介入して初めて、障害者福祉サービス利用にいたる事例が散見された。 ライフコース上のどの段階で、いかなる支援が必要であるのか、こうした事例も含めた人々の経験を分析していくことが次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では初年度にアンケート調査を行う予定であったが、まず、ヒアリング調査を行った。研究の全体像を明らかにするためには有効な計画変更であったと考えられる。 児童養護施設の施設長、職員、特別支援学級の教員、児童養護施設で生活していた経験のある障害当事者、生活困窮者支援団体の職員へのヒアリングから、施設と学校が連携、役割分担し、障害受容、特別支援学校への進路を支援している事例とともに、それらの支援が不調となった場合には生活困窮者や犯罪者として要支援対象者として浮かび上がってくる事例もみられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で重視するのは、社会的養護施設における障害のある子どものサポートの実態とともに、施設を退所した後、どのような状況で生活しているのかを明らかにすることである。しかし、施設を退所後は、何らかの問題を抱えることでしか要支援・要保護の対象として顕在化せず、支援が行われていないことが予想される。その点で、社会的養護施設や特別支援学校などを介して接触可能な調査対象者は、少なくとも何らかの支援に結びついている人々であり、卒業後に何の支援も受けてられていない人々は取りこぼされてしまう。そこで、この点を補うため施設や学校等を経由して出会った当事者から紹介を受けるといった、スノーボールサンプリングや、生活困窮者支援団体で障害当事者への調査を行うことも視野に入れ、福祉的・教育的支援の埒外にある人々に調査ができるよう努力していきたい。 また、研究を進める際の視点として、次の4点について留意していきたい。①福祉と教育の接近(施設の教育的要素、学校の福祉的要素)、②ライフコース(いつ、どの段階でサポートが必要なのか(予後が良好なケースとそうでないケースの比較)、③家族の排除と包摂(当事者の自立にとって家族が阻害要因となったケースについて、家族再統合はいかなる方向で進められたのか)、④連携(児童福祉施設における児童の進路選択の幅と連携先の多様性・連携内容) こうした視点にもとづき、good practiceとそうでない実践を比較検討しながら、社会的養護における障害児者の支援にとって有益な知見を見出せるよう、今後の研究を推進する。
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