研究課題/領域番号 |
15K13099
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
村上 満 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10555197)
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研究分担者 |
中村 環 (彼谷環) 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70288257)
高口 理子 (本江理子) 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60555192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保育ソーシャルワーカー / 効果的援助要素 / 養成カリキュラム / 養成支援システム / ケアマネジメント / 富山モデル構築 |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる平成27年度は,(1)保育現場等におけるソーシャルワーカーの配置の必要性に関する文献調査と学会の動向把握,実態調査,(2)実態調査等からの保育ソーシャルワーカーが備えるべき効果的な援助要素の抽出の検討,(3)援助要素をもとに,保育ソーシャルワーカー養成カリキュラムの検討を行った。具体的な各成果は,以下のとおりである。 (1)国内外の保育ソーシャルワーク関連の論文のすべてのとりまとめ作業を行った。具体的には,「保育」「ソーシャルワーク」の2つのキーワードを含むすべての論文のabstractをデータベース化し,レビューを作成した。また,富山県高岡市保育士会研究部会と協力し,市内すべての保育所に対して保護者へのアンケート調査を実施し,子どもや保護者を取り巻く実態把握とソーシャルサポートの必要性について調査を行った。その成果は,県の保育士会総会で研究発表(2016年5月28日)されることになった。 (2)実態調査から保育ソーシャルワーカーが備えるべき効果的な援助要素として、①「他の専門職との連携・協働力」、②「ネットワーク力」、③「関係機関・サービス活用力」、④「社会資源の発掘力」、⑤「アウトリーチ力」、⑥「コーデネーション力」といった保育場面におけるケアマネジメントの総合力が効果的な援助的要素として明らかとなった。 (3)教材開発の1つとして、日本保育ソーシャルワーク学会事務局(九州ルーテル学院大学)と連携して,日本保育ソーシャルワーク学会編『保育ソーシャルワーク学研究叢書(晃洋書房)』の具体的な構想作成に入った。 (4)「保育ソーシャルワーカー養成」のためのカリキュラム内容とシラバスの具体的な検討に入った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの観点から「おおむね順調に進展している」ことの理由を説明する。本研究をPEST分析したところ、まず1点目の政治的要因からの評価については、高岡市保育士会研究部会との協働によるスムーズな実施体制に努めてきたことから、「おおむね順調に進展している」と考えられる。2点目の経済的要因からの評価については、「やや遅れている」と言わざるを得ない。初年度は文献調査や実態調査のまとめに追われる等、内的作業が中心でもあったことから、本格的な成果物に向けての適切な予算の執行が遅れてしまったと考えられるためである。最終年度である2年目に成果を残すためにも、スムーズな予算の執行を行うこととする。3点目の社会的要因からの評価については、スクールソーシャルワーカーの増員が言われている中、新たに保育分野も職域として開拓し、ソーシャルワークを確立させていこうと試みていることから、まさにパイオニア的研究であり、チャレンジ性もある研究としては、「おおむね順調に進展している」と考えられる。4点目の技術的要因からの評価についても、効果的な援助要素の抽出から「保育ソーシャルワーカー養成」のためのカリキュラム内容とシラバスの具体的な検討が本格的に開始され、富山発の保育現場への保育ソーシャルワーカーの導入の検討と人材育成を含めた一連のシステム(富山モデル)の構築を目指す中では、「おおむね順調に進展している」と考えられる。以上のことから、総合評価として、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
自己点検にもとづいた結果、本研究の今後の推進方策について2点を挙げた。最終年度にあたる今後1年間の研究期間を充実させて、適切に本研究を推進させていきたいと考えている。まず1点目は、「保育ソーシャルワーカー養成カリキュラム」の内容の確定と教材開発の確定である。当初は、一般社団法人日本社会福祉士養成校協会加盟の大学等(262校)に対し、「保育ソーシャルワーク教育課程カリキュラム作成に伴う全国調査」を実施し、教材開発につなげていくとしていたが、日本保育ソーシャルワーク学会との連携により、教材開発を行っていくこととし、現在順調に、日本保育ソーシャルワーク学会編『保育ソーシャルワーク学研究叢書(晃洋書房)』の作成にとりかかるところである。 2点目は、人材育成をも含めた一連の養成支援システム(富山モデル)の構築とその普及策の提案である。どのようなカリキュラムで、そのような配置方法がより効果的なのか、そして波及効果を大きく導き出すには、どのようにソーシャルアクションを行う必要があるのかを保育士会や社会福祉士会と連携しながら、実践レベル(意見交換等)での検討と提案を行い、富山モデルを普及させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年間の研究期間ということを念頭に、もっとスピードアップを図るべきであったと考えている。文献調査や実態調査の段どりやまとめといった、自らによる内的作業に大きな時間をとってしまった。結果的には、全体の準備を滞らせ、本格的な成果物に向けての適切な予算の執行を遅らせてしまったことが大きな要因と考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である2年目に成果を残すためにも、まず「保育ソーシャルワーカー養成カリキュラム」の内容の確定作業と教材開発の確定作業について、人件費・謝金を適切に執行し、また研究協力者とも連携しながら、迅速に取り組みたいと考えている。次に、人材育成をも含めた一連の養成支援システム(富山モデル)の構築とその普及策の提案に関する報告書等の作成について、印刷製本費等を適切に執行し、富山モデルの普及に努めていきたいと考えている。
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